加齢で筋肉の減少する「サルコペニア」の予防策を医師が解説。ポイントは朝食とタンパク質。特に高齢者が多くとるべき食材とは
厚生労働省の「令和4年 国民健康・栄養調査」によると、20歳以上の1日の歩数の平均値は男性が6465歩、女性が5820歩で、直近10年間で減少したそうです。そのようななか、愛媛大学医学部附属病院抗加齢・予防医療センター長の伊賀瀬道也先生は「歩かない生活を送ることは、年をとると歩けなくなることに直結する」と指摘します。そこで今回は、伊賀瀬先生の著書『百歳まで歩ける人の習慣 脚力と血管力を強くする』から、いつまでも歩ける人になるための心がけを一部ご紹介します。 【図】朝食のタンパク質摂取量の割合と筋肉量の相関 * * * * * * * ◆年をとったら肉を食べよう 朝食にはしっかりタンパク質をとる 加齢とともに筋肉が減少する現象を「サルコペニア」といいます。ギリシャ語でサルコは「筋肉」、ぺニアは「減少」のことですので、サルコペニアは加齢にともなう筋肉減少症と訳せます。 サルコペニアになると、転倒しやすくなったり、その際に骨折しやすくなったり、そのほかにも認知機能の低下が起こったりするなど、さまざまな不都合が生じます。 やがてフレイル(加齢により心身が老い衰えた状態)になり、最終的に寝たきりにつながることで健康寿命を縮めてしまうこともあります。
◆サルコペニアの予防には骨格筋の維持が大切 最近の研究によって、一般的な生活における栄養や運動の面から、サルコペニアの予防法がわかってきました。 サルコペニアを予防するには、骨格筋の維持が必要です。骨格筋の筋肉量、筋力などは、毎日の食事におけるタンパク質摂取量と強い関連があります。 栄養に関する研究は多く、タンパク質摂取量が少ないと、「3年後の筋力が低下する(サルコペニアになる)」とか、「3年後にフレイルが出現しやすくなる」といった現象が確認されています。 また、高齢になると筋肉が減少しやすくなる原因として、「同化抵抗性」があると説明されています。これはいいかえると、タンパク質を構成するアミノ酸が筋肉組織に届いても筋肉タンパクがつくられにくいということです。 ただし、適切なアミノ酸を多めに供給することによって、骨格筋でタンパク質の合成を誘導する可能性があります。 厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年度版)」によると、一般的なタンパク質摂取量の目安は、18~65歳の男性で65グラム、65歳以上の男性で60グラム、成人女性で50グラムとされていますので、これを参考にしましょう。