800万円以下の物件の仲介手数料上限が引き上げ! それでも空き家流通が促進されない理由とは
2024年7月1日、国土交通省の発表で宅建業法の報酬規程の改定が行われました。今回の法改正によって800万円以下の物件の仲介手数料は30万円(税別)となります。今回は、なぜ低価格物件の仲介手数料の上限が引き上げられることになったのか、その経緯について解説します。(一心エステート株式会社代表取締役:高田一洋) 中古マンションの将来価格は予測できる?実は日経平均株価と相関関係があった! 目次 800万円以下の仲介手数料の上限引き上げの背景800万円以下の物件とはどういった物件か800万円以下の物件の手数料引き上げは、空き家流通を促進させる?800万円以下の物件の処分方法
800万円以下の仲介手数料の上限引き上げの背景
2024年7月1日、宅建業法の報酬規程の改定が行われ、低価格物件の仲介手数料の上限が引き上げられました。具体的には、800万円以下の物件の売買を行う際、不動産会社に支払う売買仲介手数料の上限が、これまでの最大で24万円(税別)から30万円(税別)になったというものです。不動産売却の仲介手数料の上限額は、次のように法律で定められている。 【不動産売却の仲介手数料の上限額の計算式】 800万円未満=30万円+消費税 800万円以上=3%+6万円+消費税 また、今回の法改正によって売主だけでなく、買主からも同額を取れるように変更されています。 空き家の増加と社会問題 この背景には、空き家の増加と、それに伴う社会問題があります。総務省が5年ごとに発表している「住宅・土地統計調査」によると、2023年時点で全国の空き家は900万戸でした。 前回2018年の849万戸から5年で51万戸増加しており、総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は13.8%と、2018年の13.6%から0.2ポイント増加して過去最高を記録しています。 空き家の増加や放置は、防犯・防災面での懸念や、街の景観悪化などを引き起こします。 仲介手数料の上限引き上げが空き家の流通促進につながる 一方で、これまでの報酬規制下では、不動産業者が低価格の空き家を取り扱うことに経済合理的なメリットが少なく、結果として空き家の流通が滞っていました。国土交通省は、今回の変更により、特に地方や郊外の低価格物件や空き家の流通が活性化することを期待しています。 また、今回の改正では、売買取引だけでなく、賃貸取引にも変更が加えられています。長期間使用されていない、または将来的に使用の見込みがない物件(長期の空家等)については、貸主から受け取れる報酬の上限が、通常の1ヵ月分の家賃の1.1倍から2.2倍に引き上げられました。 仲介手数料の上限が上がることで、不動産業者が空き家を取り扱うインセンティブが増加し、結果として空き家の流通促進につながることが今回の狙いです。