【海外トピックス】メルセデス・ベンツの利益半減、VWはドイツ3工場を閉鎖の衝撃度
メルセデス・ベンツの第3四半期EV販売は前年比マイナス31%
先週末、メルセデス・ベンツが発表した今年第3四半期の決算では、純利益が前年同期比で54%減少し、2024年通年の営業利益率予想も8.5%(昨年は12.6%)へ下方修正しました。また、ポルシェも1~9月の売上高が-7%、営業利益率は17%→14%に減少しています。背景には、中国市場での高級モデルの販売不振と、世界的なEV販売の低迷があります。またフォルクスワーゲンは、ドイツ工場3カ所を閉鎖し、従業員の賃金を一律10%カットして2年間凍結する方針であることが明らかになりました。欧州ではコロナ前から需要が200万台減少しており、VWブランドは50万台の過剰生産能力を抱え、労務費やエネルギーコストの高いドイツ工場を縮小せざるを得ないという理由です。ドイツ自動車メーカーは、近年遭遇したことのない困難の中にあります。 ●フォルクスワーゲンが米新興EVメーカーのリヴィアンに巨額投資をする理由 メルセデス・ベンツ(乗用車)の第3四半期の営業利益は前年同期比で64%も減少し、利益率は4.7%にまで落ち込みました。第3四半期のEVの世界販売は42,544台(前年同期比-31%)とプラグインHEVの台数を下回り、販売に占めるシェアも12.1%から8.4%に低下しました。最上級EVモデルEQSのフロントデザインをエンジン車風に変更するなど改良を4月に施しましたが販売は改善しておらず、特に中国ではEVの在庫処理に多額の支援金を投入したことが、大幅減益となった理由の一つです。アナリストとの会見で最高財務責任者(CFO)のハラルド・ヴィルヘルム氏は、「BEVの需要はおよそ予想していたよりもはるかに低いレベルに低迷している」「土砂降りの状況だ」と目算が外れたことを語りました。 さらにEVだけでなく、SクラスやGLSなど「トップエンド」モデルの販売台数も今年1~9月で前年同期比-19%と減少しており、メルセデスが2026年までの中期目標に掲げていたトップエンドの販売比率を2019年比で60%増加させる計画に暗雲が垂れ込めています。第4四半期の営業利益率も7%前後にとどまる見込みで、通期でも7.5~8.5%と昨年の12.6%を下回ります。 明るい材料としては、プラグインHEVの販売が増加していることやドイツの高速道路でSクラスなどに搭載するADAS「ドライブパイロット」でレベル3の自動運転が95km/hまで可能になることなどが挙げられ、さらに来年中には、コンパクトセダンのCLAなどエントリーモデル群が登場します。加えて人気SUVのGLCのモデルチェンジも控えており、これらには最新のMB.OSや「レベル2+」機能が搭載されるなど、2026年以降の業績回復には期待がかかります。ただし、世界販売の3割を占める中国市場の販売が好転することは望み薄で、欧州市場も成長は期待できないことから当面厳しい状況が続きそうです。