800万円以下の物件の仲介手数料上限が引き上げ! それでも空き家流通が促進されない理由とは
800万円以下の物件とはどういった物件か
では、800万円以下の物件とはどういったものなのでしょうか。不動産ポータルサイトのアットホームで東京都の中古マンション・戸建てで800万円以下(検索条件は1,000万円以下)を検索しました。 2024年7月時点で、ヒットする物件の90%近くが東京23区外(都下)の物件でした。23区内に絞ってみると800万円以下の物件は、築50年以上たっている戸建てや、最寄り駅から徒歩20分以上の狭い築古マンションなど、端的に言って需要がない物件です。都下の物件においても、旧耐震の物件や駅から遠い物件などがほとんどでした。 投資目的の狭いワンルーム物件などを除けば、800万円以下の物件は、立地が悪かったり、建物の状態が良くないものがほとんどです。駅から遠い古い戸建てや、メンテナンスが行き届いていない古いマンションなどが該当するでしょう。 物の値段は需給のバランスで決まるとはよく言いますが、800万円というのは、不動産のなかではかなり低価格帯です。つまり、その価格設定自体が需要の低さを反映しています。 不動産事業者の立場から言うと、800万円という価格がついた時点で、その物件にはもう「買い手がつかない」状態になっていると言えます。 このような物件の多くは大規模な改修が必要で、購入価格以上のリフォーム費用がかかることもあります。たとえば、800万円のボロボロのマンションを買ったとしても、実際にそこに住むためには700万から800万円ものリフォーム費用がかかってしまうといった理由により売却が困難になります。
800万円以下の物件の手数料引き上げは、空き家流通を促進させる?
800万円以下の物件に対する仲介手数料の上限を30万円に引き上げるという今回の法改正ですが、正直なところ、その効果は薄いでしょう。800万円以下の物件(=国交省が流通を促進させたい空き家物件)の流通への影響はほとんどないと考えます。 800万円以下の物件を専門に扱う不動産会社が多数設立されれば話は別ですが、この領域で仕事をして利益率を増やすことができる不動産会社が現れる可能性は低いと予想されます。 手数料を上げたところで、需要のない物件が突然売れるようになるわけではありません。また、30万円になったことで仲介会社のやる気やモチベーションが上がるとも思えません。 需要のない物件の売り手を見つけてくるというのはとてつもない労力と手間、そして時間がかかります。たとえ、手数料の上限が50万円になったとしても難しいと思います。 むしろ、このような施策は物件所有者に誤った期待を抱かせるかもしれないと危惧しています。手数料の上限引き上げが、売却困難な物件でも簡単に売れると錯覚させてしまう可能性もあるのではないでしょうか。