家族4人で電気代は月4千円。「世界一脱炭素に熱い」アナリストのエネルギー自給自足生活#豊かな未来を創る人
── ちなみにひと月の電気代は?(※取材は6月下旬) 先月は4,000円でした。 ── 安い...!家の電気代と、いわば車の燃料費込みということですよね。 そうなんですよ。今は自給する電気の量に対して、蓄電できる量が足りないので、現状使っているEVをもう少し大容量のものに切り替える予定です。そうするともっと電気代を抑えられると思います。
うちではHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)を入れていて、今この瞬間使われている電気が、太陽光からなのかEVからなのか、どの部屋で何kW使っているのか、可視化されているんですよ。 なのでモニターを見て、「これだけ電気が余ってるなら、洗濯機を回そう!今だー!」と、ゲーム感覚で電気を使っています。自分で電気を作ってやりくりするって面白いですよ。それをみなさんに知ってほしいですし、この家を実験場にして、暮らしにおける脱炭素の可能性を探っていきたいですね。
脱炭素でエネルギー自立と地方創生を
── まさにライフワークとなっている脱炭素の取り組み。こうしたプライベートでの実践に対して、現在仕事ではどのような展開をされているのですか。 仕事では、おもに3つの動きをしています。まず1つ目は、企業のGXコンサルティングです。今僕はコンサル企業の社員として、企業の脱炭素化支援や、脱炭素商品や事業開発を行う企業の中長期的な戦略立案、脱炭素に向けた町づくりのインフラ構築支援などをチームで行っています。 2つ目は、脱炭素にまつわる発信活動です。自治体や地方銀行、商工会、経営者協会、青年会議所などから依頼を受けて、月2~3回全国各地で最新の脱炭素に関する講演会を行っています。 そして3つ目は、自治体のアドバイザー業務です。現在4つの自治体で、全国の成功事例を紹介しながら、脱炭素に向けた町づくりの助言や提案をしています。 ── 企業や自治体の課題解決や社会のリテラシーの底上げなど、多方面から脱炭素社会の実現に向けて動いておられます。こうした活動の軸となっているのは、どんな思いでしょうか。 まずは、この国がエネルギー自立をしてほしいという切実な思いです。近年も、ウクライナで起きた戦争によって、化石燃料の価格が高騰して電気代が上がるなどのニュースがありました。これってつまりは、日本がエネルギーをコントロールするレバーを自分で握れていないということ。国の外で何か起きたときにまともに影響を受けてしまう日本の脆弱性について、外交官だった頃から大きな問題意識を抱いてきました。 一方世界では、例えば中国はもはや「CO2を減らす」ではなく「エネルギー自立をする」という明確な文脈で脱炭素を進めています。再生可能エネルギーや蓄電池など、サプライチェーンを含めて圧倒的に世界を支配しつつある。欧米はそれを脅威と捉えて、関税率を上げたり経済安全保障戦略を練ったりといった、リアクションを取っている。つまりいかにうまくエネルギー転換できるかが、世界の覇権争いで生き残れるかに関わっているのです。 日本がエネルギー自立をすれば、化石燃料を輸入して海外に流出していた10兆円以上のお金が国内で回るようになり、大きな経済波及効果が期待できます。また、他国への依存が減れば、安全保障上の脅威も下がる。そうした意味で、エネルギー自立は日本にとって非常に重要だといえます。