F1レッドブル・ホンダが30年ぶりに4連勝した理由
ホンダの快進撃が止まらない。 第5戦モナコGPを1992年以来、29年ぶりに制したホンダはその後、第6戦アゼルバイジャンGPと第7戦フランスGPも制したのに続いて、第8戦シュタイアーマルクGPでも優勝。1991年以来、30年ぶりの4連勝を達成した。30年前の4連勝は、アイルトン・セナを擁したマクラーレン・ホンダが開幕4連勝してチャンピオンシップ争いを大きくリード。最終的にドライバーズ選手権とコンストラクターズ選手権のタイトルを独占した。これがホンダにとって最後のタイトルであり、30年ぶりの4連勝はタイトル奪還に向けて、勢いのつく連勝となったことは間違いない。 その原動力となっているのは、次代のスーパースターであるマックス・フェルスタッペンの類稀なるドライビング技術と、2010年から4連覇したレッドブルが開発してきた車体性能の高さもさることながら、ホンダが彼らに供給しているパワーユニットの高いパフォーマンスが大きく影響していることは言うまでもない。 フランスGPでレッドブル・ホンダに逆転負けを喫したメルセデスのルイス・ハミルトンは「新しいエンジンはスペックが違うのか、ストレートでは追いつけないほど速かった」と脱帽したほどだった。 現在のF1は、レギュレーション(規則)でパワーユニットは年間使用制限があり、ICE(エンジン)、ターボ、 MGU-H(熱回生ユニット)、MGU-K(運動回生ユニット)の4つの主要構成部品に関しては年間3基までしか使用することができない。ホンダはフランスGPで2基目を投入したわけだが、それはルール上、1基目と同じスペックだった。 だが、使い方という部分においては日々進化を遂げている。今年のホンダのパワーユニットは「新骨格」と呼ばれ、ICEのデザインが大きく変更され、馬力がアップしただけでなく、コンパクトになって運動性能も向上した。ただし、ファクトリーのベンチの上で示すパワーユニットの性能が、サーキットでの実走行で常に再現されるとは限らない。走行中、パワーユニットにはさまざまな力が加わる。また、気象条件も一定ではない。その中で、少しでも本来の性能を引き出すためには、現場での微調整が必要となる。 新骨格のパワーユニットで初めてレースした1基目では、その微調整は手探りだったに違いない。年間3基で乗り切るためにはリスクを冒すわけにはいかない。ましてや、今年はタイトルがかかった重要なシーズン。過去5年間でホンダが2基目を投入してきたタイミングは、2017年は3戦目で、2018年は2戦目、2019年は4戦目、そして2020年は5戦目とライバル勢よりもタイミングが明らかに早かった。