「鉄腕アトム」も誤訳された…少し小難しい「危険な誤訳」という話をしよう
本当のディスインフォメーション工作への対策こそ急務
そう考えると、情報の真偽や正誤の重要性を否定するわけではないが、それ以上に、騙そうとする意図のもとに流される不正確な情報について、騙されないようにする対策のほうがずっと重要であることになる。 たとえば、総務官僚や既存の主要マスメディアは、私がここで説明してきたように、何やら不適切で不十分な議論を展開して、偽情報や誤情報を取り締まるための規制を導入したがっている。そのために、彼らこそがディスインフォメーション工作をしているようにみえる。この情報統制によって、国民を騙し、国家にとって不都合な情報を国民から遮断するというのが最終的なねらいだ。 ジャニー喜多川の性加害について、口をつぐむことで、ジャニーズ事務所という男娼窟を放置してきた日本の警察、マスメディアの過去を考えれば、ディスインフォメーション工作を通じて情報統制をより本格化することも十分にありえると思えてくる。 小池百合子都知事の学歴詐称の「真偽」さえつけられない、日本のマスメディアのひどさを考えるとき、政府とマスメディアとの結託が引き起こす情報統制は、私たちを「戦前」の悪夢へといざないかねない。 すでに、総務官僚と既存のマスメディアは情報統制へと急速に傾きはじめていることに気づいてほしい。「ディスインフォメーション」を「偽情報」とあえて誤訳して「したり顔」を決め込んでいる連中の術中にはまってはならない。
塩原 俊彦(元高知大学大学院准教授)