菅政権の「正念場」 衆参補選・再選挙のポイントは?
●解散戦略にどんな影響があり得る?
これらの補選・再選挙は、今年10月までに行われる総選挙の「前哨戦」と位置づけられる。選挙結果は衆院解散の時期にも絡んでくるだろう。解散・総選挙の時期については諸説が乱れ飛んでおり、5月説、7月4日の東京都議会選との同日選、東京五輪・パラリンピック後といった可能性が挙げられている。 5月説は、3月に下村博文政調会長が菅首相訪米後の解散を示唆したため広まった。菅政権の目玉であるデジタル庁創設関連法が成立したタイミングで解散という声もあるようである。しかし、新型コロナの第4波が到来しつつある状況の中では、解散を断行するのは難しいかもしれない。特に、今回の補選・再選挙で自民党は全体的に不利な状況であり、仮に広島で自民党候補が敗れるようなことがあれば、この時期の総選挙の可能性はきわめて低くなるだろう。また、万が一五輪中止の事態になれば、その直後の総選挙はまずあり得ないのではないか。 都議選との同日選説も根強いが、連立パートナーの公明党は都議選を首都決戦として重視しているため、都議選と衆院選にエネルギーが分散されることを嫌っている。総選挙後の一連の流れが東京五輪の開幕(7月23日)と重なってしまう懸念もある。 したがって、今のところ最も可能性が高いのは、東京五輪・パラリンピックが終わった秋口であろう。菅首相の自民党総裁任期が9月30日までなので、こちらとの関係も考えなくてはならない。菅首相としては、9月の総裁選で再選を決め、その勢いで解散・総選挙に持ち込み、勝利するシナリオを考えているのではないだろうか。 一方で、そのシナリオへのハードルも存在する。現在菅政権の支持率は回復傾向にあるものの、コロナ第4波の到来や、自民党議員の不祥事が相次いでいることを考えると、菅首相では総選挙を戦えないとの声が自民党内で出てくる可能性もある。 上記の通り、今回の補選・再選挙では、北海道は自民党の不戦敗、長野は野党候補が優勢という状況である。広島で与党候補が敗れた場合には、9月の総裁選に向けて「菅降ろし」の動きが出始める可能性は否定できない。 この週末が菅政権にとっての正念場かもしれない。