菅政権の「正念場」 衆参補選・再選挙のポイントは?
●克行氏の補選はなぜ行われない?
現在の衆院議員の任期満了日は本年10月21日である。公職選挙法の規定により、任期満了の一定期間前に欠員が生じた場合には、補選は行われず、総選挙に吸収されることになっている。 克行氏の場合、3月15日までに辞職がなされていれば、案里氏と同じ4月25日に補選が行われるはずだった。ところが克行氏は3月23日に議員辞職を表明し、4月1日に衆院本会議で辞職が認められた。このため克行氏の辞職に伴う補選は行われず、広島3区は次回総選挙まで欠員のままとなる。 実は、克行氏は4月に補選が行われないように辞職の時期を調整した可能性がある。広島で参院の再選挙に加えて衆院の補選も行われることになると、与党にかかる負担はかなり大きなものになる。克行氏に代わる広島3区の与党候補は公明党の斉藤鉄夫副代表だが、立候補予定者に決まったばかりで準備不足とも言われている。しかも、次に見るように衆院北海道2区も参院長野選挙区も与党に不利な状況である。広島3区の補選でも与党が敗れるようなことになると、政権への打撃は相当なものとなろう。そのため与党幹部と相談の上、3月16日以降の辞職としたのではないかとの噂がささやかれている。
●2つの選挙区で与野党激突の構図
では、今回の補選・再選挙のポイントについて見てみよう。 衆院北海道2区では、自民党が候補擁立を断念し「不戦敗」となった。日本維新の会などから計6人が出馬しているが、その中で優勢とみられているのが、立憲民主党の松木謙公・元衆院議員である(共産党道委員会・国民民主党・社民党推薦)。 参院長野選挙区では、自民党が小松裕・元衆院議員を擁立し(公明党推薦)、立憲民主党が故羽田雄一郎氏の実弟である羽田次郎氏を立てている(共産党・国民民主党・社民党推薦)。与野党対決の構図となっているが、羽田次郎氏は祖父の羽田武嗣郎(ぶしろう)氏、父の羽田孜(つとむ)氏(元首相)と3代続く政治家の家系であり、長野に強い地盤を有している。雄一郎氏の「弔い合戦」と位置づけられていることもあり、立憲民主党が有利な状況だといえる。 参院広島選挙区では、自民党の公認候補は元経済産業省課長補佐の西田英範氏(公明党推薦)、野党候補はフリーアナウンサーの宮口治子氏である(立憲民主党・国民民主党・社民党推薦)。こちらも与野党対決構図である。広島は元来自民党の地盤が強いところであり、岸田文雄・前政調会長の地元でもある。新たに自民党広島県連会長となった岸田氏が西田氏の応援に力を入れているが、河井夫妻の大規模買収事件という逆風が吹いている中、結果は見通せない。