台湾全土を徒歩で1周、その距離3856km!生活藝人・田中佑典さん「台湾微遍路」への挑戦
「媽祖」に導かれた旅 台湾微遍路の誕生
日本と台湾を文化でつなぐ。そんな活動の現場も当初は東京/台北間が多かったのですが、次第に興味は「ローカル/地方」に移っていきます。そんな中、2019年、台湾で敬愛される女神「媽祖」の巡礼(大甲媽祖巡礼)に参加することに。 大甲媽祖巡礼は、台中市の大甲鎮瀾宮を出発し、彰化県、雲林県、嘉義県の4県市を8泊9日間で一周する台湾最大級の宗教行事。総距離はおよそ340km、毎年100万人以上の巡礼者・観覧者が参加するといわれています。 大甲媽祖巡礼に参加し感じたことは、「道で偶然出会った人たち、不意に目にした絶景に、台湾の本当の魅力が潜んでいるのではないか。歩くことで、その土地の魅力をより深く知ることができるのではないか…」。この経験が、「微遍路」という旅の誕生のきっかけとなります。 世界がコロナ禍に見舞われた2020年には、故郷の福井県を徒歩で横断する旅「微遍路」で福井県全市町村を完歩。そして2023年、田中さんは福井での「微遍路」よりもはるかに長い距離を歩く「台湾微遍路」に踏み出しました。
台湾微遍路、はるかなる旅路
田中さんは全行程を3回に分ける形で「台湾微遍路」を計画。3回に分けた理由を聞いたところ「ノービザで台湾に滞在できるのは1回の渡航で90日までなので。90日間でも普通にぐるっと一周することはできるのですが、できるだけ長く時間をかけて、隅々まで歩いてみたかったんです」との答えが。 2023年7月1日、台湾南部の高雄市を出発。第1弾は2023年7月1日~9月2日までの64日間、1351km。高雄市から北上し、台湾の東海岸である台東県、花蓮県を経て島の北東部にある宜蘭県に到達。美しい海岸線を臨める一方で山がちな地形でもある、文字通り「山あり谷あり」の旅路です。 第2弾は2023年11月6日~12月29日までの54日間、1234km。第1弾のゴール地点である宜蘭県からまずは北上し、台北市を通過して、今度は西岸を南下して島の中央部に近い台中市まで向かいます。悪天候や寒波に見舞われた、かなり厳しい道のりだったといいます。 第3弾は2024年1月11日~3月6日までの56日間、1271km。第2弾のゴール地点である台中市をスタートして第1弾の出発地点である高雄市に向かう旅です。2月にも関わらず30℃超えとなる猛暑日の中でゴールを目指します。終盤の高雄・蚵仔寮での夜明けはこの旅一番の美しさだったそうです。 田中さんのすごいところは、「台湾微遍路」期間中はほぼ毎日歩き詰めだというのに、至る所で現地の人たちとしっかり交流しているところ。一緒に風呂に浸かっていたり、カラオケを歌っていたり、朝の公園に紛れ込んで現地の人たちと一緒に体操をしたり…。歩きながらその日の宿を探し、時には人に頼って泊めさせてもらい、そしてさらにその人たちと交流する。これを3856kmの旅路の中で実践しつづけたのですから、ものすごい熱量です。