「言うことをきかないと鬼が出るよ」と子どもをしつけるのは心理的虐待? 発達心理学の専門家に聞く
子どもの頃、親に「いつまでも寝ないとオバケがでるよ」「嘘つきは地獄に落ちる」と言われた経験がある人は、実は多いのでは? 秋田の「なまはげ」に代表されるように、伝統文化においても、言うことをきかない子のところに“鬼”はやってきます。近年それはデジタル化され、スマホやタブレットなどに鬼の顔が映し出されて子どもを脅す「鬼の電話」なるものも。そんな風潮に、SNSでは「子どもの心にトラウマを残す」「心理的虐待では」と話題にもなりました。「なまはげ」「鬼の電話」「地獄の絵本」などは子どもに悪影響を及ぼすのでしょうか。発達心理学と幼児教育の研究を続けながら、2人の子どもを育ててきた東京家政大学子ども支援学部教授・岩立京子さんに聞きました。 【マンガ】かんしゃくを起こす5歳児、勝ち負けへのこだわりが「負けても大丈夫」に変わった魔法の言葉とは ■古今東西、親は「鬼的なもの」を使ってしつけていた 鬼やオバケやえんま大王……確かに子どもには恐ろしいものですよね。私自身も「寝ないとオバケがくる」と脅された記憶がありますし、わが子にも『しごくのそうべえ』という地獄の絵本を読みきかせ、「悪い人たちは地獄に落ちるんだよ」と話したこともありました。「なまはげ」は令和の今も続く伝統行事ですし、最近ではスマホのアプリなどで「鬼の電話」というものまであるのですね。 そう考えると、日本人は長く「鬼的なもの」を子どものしつけに使ってきたことがわかります。どんなに説明し、制止し、禁止しても子どもが言うことを聞かないとき、親は自分よりもっと怖いものの力を借りていたのです。 「なんとかして、子どもに言うことをきかせたい」というのは、古今東西共通の親心。共感する人も多いのではないでしょうか。もちろん、私もです。 でも、そのやり方は心理的虐待にあたるのでしょうか? 結論から言えば、私は虐待にはならないと思います。やり方にもよりますが、子育ての中で1回や2回「鬼的なもの」に少しだけ登場してもらう程度で、トラウマにはならないでしょう。それに、4~5歳くらいになれば「鬼なんて実際にはいない」と気づくものです。