「言うことをきかないと鬼が出るよ」と子どもをしつけるのは心理的虐待? 発達心理学の専門家に聞く
もちろん、どんな子に対しても「脅し」で言うことをきかせることは賛成できません。あくまで「どうしようもないときに1~2回使う」くらいでは虐待にはならない、とお伝えしたいのです。 ただし、HSC(ハイリー・センシティブ・チャイルド)、いわゆる「繊細すぎる子」にとっては大変な恐怖になることがあります。時間がたってからでも鬼を恐れ、暗い場所をこわがる、夜眠れなくなる、眠りながら悲鳴を上げるなどの症状が出ることもあります。 そうでなくても、極端に怖がりな子もいるでしょうから、注意が必要です。 ■「なまはげ」は怖い、でも大丈夫。そう思えるのはなぜ? ところで、「なまはげ」として登場する鬼は、いったい何なのかご存知ですか? 調べてみたところ、神の使いなのだそうです。鬼にもよい鬼と悪い鬼がいるのですね。 「なまはげ」は一年に一度、神の使いとして各家庭をまわります。悪いことをする人がいないか見回り、悪い人や悪い子には善悪を教え、厄払いをするのです。 このような鬼は人々に「おそれ」られていますが、「恐れ」でも「怖れ」でもなく、「畏れ」――つまり畏敬の念を持たれているのです。 何が言いたいかというと、「なまはげ」は単に子どもを怖がらせ、脅す道具ではないということです。その地域に根差す精神性を伝える大切な存在であることを忘れないでください。その意味で、「鬼の電話」などとは分けて考えるべきだと思っています。 とはいえ、「なまはげ」も子どもにとっては鬼です。顔も声も恐ろしいので、子どもは怖がります。けれど大人は、当然ですが恐れてはいません。「なまはげ」がもたらす善なるものを信頼して、自宅に招いているのです。 だから子どもも、ビックリして大泣きはしますが、心が傷つくような恐怖にはなりません。だって親は怖がっていないし、自分は親の腕の中で守られているのだから、怖いけれどきっと大丈夫……そう思えるのではないでしょうか。 地獄の絵本にも、似たような側面があります。こわい物語やおどろおどろしい風景が描かれてはいても、読んでいるのは大好きなママやパパ。膝の上でやさしく抱えられ、ぬくもりを感じ、守られながら読んでいるのです。