米津玄師、YOASOBI、Adoも心酔…電子の歌姫「16歳・初音ミク」が”世界を変えた"と言われる3つの理由
■歌詞と音符を入力すれば誰でも「音楽」が作れる いま、日本発のポップカルチャーに、世界中から注目が集まっている。 【図表】初音ミクとは何者か 「VOCALOID(ボーカロイド)」から生まれた「ボカロ(ボーカロイド)カルチャー」が、マンガ、アニメ、ゲームなどに並ぶ新たな文化として、国内外から熱い視線を集めている。 そもそもボーカロイドとは、ヤマハが開発した歌声合成技術のこと。最初に世に登場したのは2003年だが、あるできごとをきっかけに急速に広まった。07年8月、北海道札幌市にあるクリプトン・フューチャー・メディア(以下、クリプトン)が第2世代のボーカロイドエンジン「VOCALOID2」を用いた初音ミクを発売したのだ。 初音ミクは歌声合成ソフトウエアである。歌詞と音符を入力すれば、誰でも自由に歌を歌わせることができる。つまりは、コンピュータで音楽を制作するDTM(デスクトップ・ミュージック)のためのソフトウエアなのだが、何より大きなインパクトを持っていたのは、それが同時にバーチャル・シンガーとしての側面を持っていたことだ。 初音ミクは年齢16歳、身長158cm、体重42kg。青緑色のツインテールが特徴の、キュートなルックスを持つ。その「電子の歌姫」としての初音ミクのキャラクター性は、発売直後からたくさんのアマチュアクリエイターの創作意欲に火をつけた。それでも、ボーカロイドがここまで大きな影響力を持つ存在になることを当初から予見していた人は、ほとんどいなかったはずだ。 初音ミクの登場から17年。いまや、ボーカロイドを用いて楽曲を制作し、インターネットに投稿する「ボカロP」出身のアーティストは、20年代の日本の音楽カルチャーを牽引する存在になっている。こうした経歴を持つアーティストの作った楽曲はここ数年のヒットチャートで上位を占め、日本のポップミュージックのメインストリームのひとつとなっている。それだけでなく、世界各国にファンを広げ、国境を超えた支持を獲得している。 その代表的な存在の一人が、シンガーソングライターの米津玄師だ。スタジオジブリの宮崎(正しくはたつさき)駿監督作品『君たちはどう生きるか』の主題歌「地球儀」や、NHK連続テレビ小説『虎に翼』主題歌の「さよーならまたいつか!」など、数々のヒットソングを手掛けている、いまや日本を代表する音楽家。 テレビアニメ『チェンソーマン』のオープニングテーマとして書き下ろされた「KICK BACK」は海外でも多くのリスナーを獲得し、アメリカレコード協会(RIAA)により、日本語詞の楽曲として初のゴールド認定を受けた。その米津玄師は、09年に「ハチ」という名義で動画配信サイト「ニコニコ動画」にボーカロイドのオリジナル曲を投稿し、ボカロPとして音楽活動を始めた。12年から本名の「米津玄師」名義で、自らの歌声で楽曲を発表してきたキャリアの持ち主だ。