日銀・黒田総裁会見1月21日(全文2)今年注視すべきはやはりコロナ
小幅な修正で済むのか
テレビ東京:テレビ東京の大江と申します。よろしくお願いいたします。2点、質問させていただきます。まずは成長率見通しについてなんですけれども、2020年度の実質成長率見通し、10月時点の展望レポートではその見通しの前提として広範な公衆衛生上の措置が再び導入されるような感染症の大規模な再拡大はないと想定しているということだったんですけれども、実際にはその前提が大きく変わって11の都府県で緊急事態宣言が出されるという状況になりました。この前提が大きく変わったのにマイナス5.5%からマイナス5.6%という、これくらいの修正で済むのかなという素朴な疑問があるんですが、その点どう見ていらっしゃるかというのがまず1点です。 そして、もう1つは、2021年の最初の金融政策決定会合後の会見ということでお伺いしたいんですけれども、この1年の中でも総裁が特に注視するトピックというのはなんでしょうか。 黒田:まず第1点ですけれども、10月の時点の見通しでそういうことを申し上げたのはそのとおりなんですけれども、その後の経済の実体を見てますと、ご承知のように世界的に製造業、それから貿易、わが国にとっての輸出、鉱工業生産というものがかなり以前予想してたより強く回復して、ほぼもう感染症拡大以前のレベルに戻っているというような状況も考慮されているわけです。
2020年度の実質成長率見通しが楽観的とは言えない
で、他方で昨年末から感染症が拡大して、今年に入って、11都府県に緊急事態宣言が行われて、その対面型サービスにかなり強い下押し圧力が効いているということもあるんですね。それから政府の経済政策、あるいは日本銀行がやっておる金融政策も含めてですけども、特に政府の経済対策は主として2021年度の経済の押し上げに効いているわけですけれども、もちろん2020年度の経済についてもそういうものがない場合に比べれば当然サポートする力はあるわけですので、今申し上げたようにこの見通し、2020年度の実質成長率の見通しが特に楽観的だというふうには言えないと思います。そういった両面を見ながら、各委員が出された見通しの中央値であろうというふうに思っております。 なお21年度、22年度、特に21年度については、経済対策の効果がかなり織り込まれているということであろうと思います。 今年についてうんぬんというのはなかなか難しいんですけども、去年、皆さんが言っておられた不確実性というのはなんだったかっていうと、1つはコロナであり、2つ目は大統領選挙であり、米国大統領選挙であり、3つ目が英国のEU離脱問題だったわけですね。コロナ感染症のほうはまだ続いていますし、第2波だか第3波で広がっている地域もありますけど、他方で対応法の知見もたまってきているし、特にワクチンが、いよいよ接種されるのが次第に広がってきているという明るい見通しもあるということであります。 それから米国の大統領選挙は、あまりよその国の政治情勢について何か言うのも失礼ですけども、バイデン大統領が就任して、昨日の就任式も非常に平穏に行われて、バイデン大統領がかなり矢継ぎ早に新しい政策を打ち出されているということがあると。 それから英国のEU離脱の話は、昨年末の土壇場で英国とEUの合意ができて、自由貿易協定ができたわけですので、1月に入って新しい体制になっているわけですけども、一部、入管というか、のところでトラックが停滞しているとか、いろんなことをいわれていますけども、しかし昨年懸念していた合意なき離脱の可能性とか、そういうものはまったくなくなっているわけですね。