日銀・黒田総裁会見1月21日(全文1)サービス消費で下押し圧力強まる
日銀の黒田東彦総裁は金融政策決定会合後の21日午後、記者会見を行った。 ※【**** 00:35:30】などと記した部分は、判別できなかった箇所ですので、ご了承ください。タイムレコードは、「日銀・黒田総裁が会見 金融政策決定会合後に(2021年1月21日)」に対応しております。 【動画】日銀・黒田総裁が会見 金融政策決定会合後に(2021年1月21日) ◇ ◇
金融市場調節方針は現状維持
朝日新聞:幹事社の朝日新聞、寺西です。今日はよろしくお願いします。それではまず今日の会合の決定内容についてのご説明からお願いします。 黒田:本日の決定会合では長短金利操作、いわゆるイールドカーブ・コントロールの下での金融市場調節方針について、現状維持とすることを賛成多数で決定しました。すなわち、短期金利について日本銀行当座預金のうち、政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用するとともに、長期金利については10年物国債金利が0%程度で推移するよう、上限を設けず、必要な金額の長期国債の買い入れを行います。また、長期国債以外の資産の買い入れ方針に関しても、現状維持とすることを全員一致で決定しました。ETFおよびJ-REITは当面、年間約12兆円、年間約1800億円に相当する保有残高の増加ペースを上限に、積極的な買い入れを行います。CP等、社債等については、2021年9月末までの間、合わせて約20兆円の残高を上限として、買い入れを行います。 今回の決定会合では、「貸出増加を支援するための資金供給」および「成長基盤強化を支援するための資金供給」について、貸付実行期限を1年間延長することも決定しております。 本日は展望レポートを決定、公表しましたので、これに沿って経済・物価の現状と、先行きについての見方を説明いたします。
輸出や鉱工業生産は増加
わが国の景気の現状については、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から、引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直していると判断しました。やや詳しく申し上げますと、海外経済は一部で感染症の再拡大の影響が見られますが、持ち直しています。そうした下で、輸出や鉱工業生産は増加を続けています。また、企業収益や業況感は大幅に悪化したあと、徐々に改善しています。設備投資は業種間のばらつきを伴いながら、全体としては下げ止まっています。 雇用・所得環境を見ますと、感染症の影響から弱い動きが続いています。個人消費は基調としては徐々に持ち直していますが、足元では飲食・宿泊等のサービス消費において、下押し圧力が強まっています。 金融環境については全体として緩和した状態にありますが、企業の資金繰りに厳しさが見られるなど、企業金融面で緩和度合いが低下した状態となっております。 先行きについては、新型コロナウイルス感染症の影響が徐々に和らいでいく下で、外需の回復や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、改善基調をたどるとみられます。もっとも、感染症への警戒感が続く中で、そのペースは緩やかなものにとどまると考えられます。特に当面は感染症の再拡大の影響から、対面型サービス消費を中心に下押し圧力の強い状態が続くとみられます。その後、世界的に感染症の影響が収束していけば、海外経済が着実な成長経路に復していく下で、わが国経済はさらに改善を続けると予想されます。 次に物価ですが、生鮮食品を除いた消費者物価の前年比を見ますと、感染症や既往の原油価格下落、Go To トラベル事業の影響などによりマイナスとなっています。予想物価上昇率は弱含んでいます。 先行きについては、消費者物価の前年比は当面、感染症や既往の原油価格下落、Go To トラベル事業の影響などを受けて、マイナスで推移するとみられます。その後、経済の改善に伴い、物価への下押し圧力は次第に減衰していくことや、原油価格下落の影響などが剥落していくことから、消費者物価の前年比はプラスに転じていき、徐々に上昇率を高めていくと考えられます。予想物価上昇率も再び高まっていくとみています。 前回の見通しと比べますと、成長率については政府の経済対策の効果などを前提、あるいは背景に、2021年度を中心に幾分、上振れています。物価についてはおおむね不変です。ただし、こうした先行きの見通しは感染症の帰趨や、それが内外経済に与える影響の大きさによって変わりうるため、不透明感が極めて強いと考えています。