日銀・黒田総裁会見1月21日(全文2)今年注視すべきはやはりコロナ
再びデフレに陥るリスクはないのか
NHK:総裁、NHKの【ナガノ 00:30:43】です。物価のリスク要因についてお伺いしたいと思います。総裁、おっしゃいましたように、確かに値下げが広範化していないフェーズかとは思うんですけど、一方で今月、日銀が公表した需給ギャップについては2期連続でマイナスになっています。これはなかなか無視できないのではないかと思います。 同じタイミングでは、潜在成長率が10年ぶりにマイナスになったという公表もされているわけですけれども、再びデフレに陥るリスクがないのかどうか。この場でも議論にはなってはいますけども、黒田総裁のご所見、問題意識をあらためてお伺いできればと思います。よろしくお願いします。 黒田:従来から申し上げておりますとおり、中長期的な物価の動向というものは、大きく理論的に分析すると大きく分けて2つの要素があって、1つはやはり需給ギャップであり、もう1つが予想インフレ率、インフレ期待ということだと思います。そうした中で足元、インフレ期待がやや弱含んでいると。他方で需給ギャップがマイナスになっているということは物価上昇率について引き下げ要因になりうるということはそのとおりだと思うんですね。 ただ現時点で、生鮮食品を除く消費者物価の指数が足元でマイナス1%近くになってるんですけれども、中身をよく見てみますと原油価格の上昇の影響とかGo To トラベルの影響とか、その他の一時的な要因がかなりあって、そういったものを除いたベースで見ると、小幅ながら依然としてまだプラスでずっと推移してるんですね。だからそういう点も十分現状としてそうなっているっていうことをよく認識していく必要があると。
デフレリスクが非常に高いとは見ていない
それから2番目には先ほどのサービス価格の関係で申し上げましたが、普通のように需要が減っているっていうんじゃなくて、結局、外出抑制とか宿泊を見送るとか対面型サービスを消費者が意図的に感染を予防するために抑制してるわけですから、そういうときに企業の側で価格を下げて需要を取り込もうというインセンティブっていうかそういう要素があまりないということも考えておく必要があろうと。 だから需給ギャップという意味では、あるいは成長率が去年がたっと落ちて、今年度全体で見てもマイナス、先ほど申し上げたようにマイナス5.6%とか、そういうふうになろうというときでありますけれども、それに対して現実の物価とか、あるいは予想物価なんかを見ましてもそれほど極端に下がってないというのは、将来における感染症が収束した場合には金融危機から来る不況とか、あるいは自然災害で設備等を破壊されるとか、そういうものと違いますので、収束されれば経済活動も元に戻りやすいっていうことも企業側も家計側も考えておられると思うんですけれどもね。 そういった下で、足元は感染症の影響によって需給ギャップも大きく下がってたり、そういうことはあっても、それが直ちに物価あるいは中長期で見た予想物価上昇率に大きなマイナスの影響は及ぼしていないと。そういう意味では、デフレのリスクが非常に高いというふうには見てないんですね。 ただやはりご指摘のような潜在成長率が低下しているんではないかとか、そういった要因もよく見ていく必要がありますので、十分物価動向、その基礎にある需給ギャップとか物価予想とか、そういうものは注視してまいりますけれども、現時点でデフレリスクが非常に高まっているというふうには見ておりません。