独身女子、老後の家をどうするか。会社の転勤で京都に出会う。東京と京都の2拠点生活、定年後は京都へ「Iターン」か
◆和室で、「ステキな床の間」もある 志帆さんは転勤族です。会社は男女同等で、女性も、男性と給与体系は同じで、転勤もあります。志帆さんも、若い時から何度か地方に暮らしてきました。 さすがに50代半ばになっての関西転勤は体力的にも精神的にもきつく、「せっかくなら楽しもうと思って」、京都に住もうと思い立ったのです。京都は関西の通勤圏です。友人知人の伝手を使い、京都の地場の不動産屋にたどり着きました。 京都も街中は家賃が高く、物件は少ないです。ことに春は学生さんが大量に部屋を探す時期で、なかなか良い物件は出ない、出てもすぐなくなる、と不動産屋からは言われました。 この物件は2部屋が和室で、障子もあり、志帆さん曰く「ステキな床の間」もあるなど、ややユニークな内装です。「もしかしたら、もう申し込みが入っちゃってるかも」と、案内してくれた不動産屋がはらはらしていたほどでした。幸い、契約できて、無事に引っ越せました。 志帆さんは当時、中間管理職でした。異動直後はコロナ禍だったため、関西の職場には、交代制の出社日だけ通勤するルール。基本は自宅でのリモートワークでした。 パソコン業務が多く、目が疲れるため、志帆さんは在宅ワーク用に、自腹で大型モニターを購入。知人に紹介された京都の家具屋に頼んで、自分でデザインした仕事机も作ってもらいました。プリンターを置く、お揃いの袖机も特注。総檜で、けっこうなお値段でしたが、「檜のいーい匂いがするの」と、満足しています。自宅が書斎兼仕事場です。
◆京都には「人間的な暮らし」がある 会社帰り、夜遅くに自宅の最寄り駅で電車を降りると、周囲は真っ暗です。商店などの灯もなく、月が見えます。「真っ暗~。あ、お月さま~、って思うんです」。 遠くには京都を囲む山々。治安はいいので、「お月様がきれいだなあ」と、自然を感じながら歩いて帰ります。会社までドアツードアで1時間半近くかかりましたが、それでも、京都に住んで良かったと思いました。 「ようやく言文一致した、っていう感じ。落ち着くんです」と、志帆さんは喩えます。「暑いな~、寒いな~、ああ生きてる~って思うんです」。かつて東京にいた時は、考えていることと、やっていることとが一致していなかった、言っていることやしたいことと、実際の行動とがちぐはぐだった、理想と現実がかけ離れていた、と言います。 けれど、京都で暮らして初めて、したいことと、していることを、一致させることができました。東京では不可能だっただけで、京都でなら可能だと分かった、ということでしょう。 「もちろん、東京には何でもある。便利だし、すごい。だけど、東京は何でも『お金』。お金があればなんでも買えて、解決できる。お金がないとできない。東京には経済と文化はあるけど、のんびりできる自然はない」 「京都だと、自転車で行ける範囲に、文化も自然もある。あの森何の森?って思ったら下鴨神社だったりとか。めんどくささも含めて、お金だけじゃない価値観が、ここにはある。基本、のんびりしてる。東京とは文脈が違うところだと感じる」 ひとことで言えば、京都には「人間的な暮らし」がある、ということ? そう、と志帆さんは肯定します。でも、京都は独自のルールがあって、よそ者は住みにくいとも言われますが? 「もちろん、私はこの先何年京都に住んでも、よそ者。一生、京都人にはなれない。それはしょうがない。だって、京都に生まれ育った人たちは、ずっと何世代も、同じ場所で、同じ顔ぶれのまま、自分たちのコミュニティーを守ってきたんだから。そうしないと共同体が守れないから」
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