元日本代表FW佐藤寿人が引退発表…ミスターフェアプレーが森保監督に反抗した夜
身長170cm体重71kgのサイズは、フォワードとして決して大きくはない。それでもチームメイトたちの相互理解を深め、対峙するディフェンダーたちとのさまざまな駆け引きを制し、瞬間的なスピードを生かしながら「ワンタッチゴーラー」と呼ばれるストライカー像を作り上げた。 数多くの仲間に支えられて、中山に並んだとあらためて実感したのだろう。迎えたオフ。佐藤は名前の頭文字『H』と背番号『11』をあしらったロゴが入った特製クラッチバッグを、自身も愛用している鞄ブランドへ注文。157ゴールをアシストした仲間たちへの恩返しとして贈っている。 中山を抜き、最終的に161まで伸ばしたJ1通算ゴール数はすぐにFW大久保嘉人(現東京ヴェルディ)に抜かれ、現時点で24ゴール差をつけられている。しかし、2017シーズンにJ2へ降格した名古屋へ移籍するなど、最後の4シーズンのうち3年をJ2でプレーした佐藤に後悔はない。 「個人の記録なんて考えていない。考えているのならば、J2へ移籍しないでしょう」 名古屋移籍直後にこう笑った佐藤は自らを必要としてくれるチームで、フェアプレー精神と真っ赤に燃える闘争心、そしてストライカーがもつエゴイストの一面を絶妙のバランスで調合してきたプロ人生に幕を降ろし、2016年3月に生まれた三男、瑠那人君の名前の一部も刻まれたスパイクを脱ぐ。 記録と記憶を介して示し続けた、眩しいほど誠実で、真っ直ぐでカッコいい生き様は、サッカーを始めて久しい長男と次男を含めた、日本サッカー界の未来を担う子どもたちに受け継がれていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)