STAPは「夢の細胞」で終わるのか 若山教授「できる人が再現するしかない」
6月16日午後、山梨大学で、STAP細胞論文の著者の1人である若山照彦・山梨大学教授の記者会見が開かれました。小保方晴子・理化学研究所研究ユニットリーダーは、若山教授が作成し、提供したマウスの細胞からSTAP細胞をつくったとされています。さらに若山教授は、そのSTAP細胞からの「キメラマウス」の作製と「STAP幹細胞」の樹立を担当しました。3月10日、小保方氏が過去に書いた博士論文からの流用である疑惑が浮上したことを受けて若山教授は、第三者機関に解析を依頼することを決めたと表明しました。
若山氏が提供したマウスに由来しない
16日の会見では、解析の結果、「STAP幹細胞は自分たちが提供したマウスに由来するものではないことが明らかになった」と若山教授はいいます。 第三者機関は別のSTAP幹細胞も解析したのですが、若山教授らが提供したマウスに由来するものではないことがわかった、とのことです。これらの結果はこれまでの説明と矛盾します。そうなるとSTAP細胞は、由来のわからないマウスの細胞から小保方研究ユニットリーダーによってつくられた、ということになります。前提とする条件が不透明では、第三者による再現は困難を極めるどころか、意味がなくなります。 若山教授はこうした結果を受けて、「STAP細胞があると示す証拠はない。というか、あの時点(3月10日)でわからなかったことが、現時点ではもっとわからなくなった」といいます。「あればいまも夢の細胞です。ただ、すべての解析結果が否定していると思います」と発言。その一方で、「あるという証拠はないが、絶対ないともいえない」と、慎重な姿勢も見せています。
若山会見を小保方会見、笹井会見と比べてみると
筆者はこの会見をインターネット中継で見ました。最近は会見が中継されることも多いですが、原発事故やSTAP細胞問題のように専門性の高い科学技術分野をめぐる会見などを見るさいには、語られている内容だけでなく、“「語られ方”」に注目するのも1つの見方です。 たとえば今回、若山教授は「絶対ないともいえない」と断言を避けています。科学に絶対はありません。また、「ない」ということを証明することは「悪魔の証明」ともいわれるようにきわめて困難なので、若山氏の態度は、科学者としては誠実かつ当然のものだといえます。「STAP細胞はあります!」と証拠も見せず断言した小保方氏(4月9日)とはきわめて対照的です。また、若山教授は記者に質問されたこと1つひとつに、比較的正確に対応して回答しています。これが普通なのですが、同じ共著者の笹井氏は記者の質問を微妙に回避し、自分の主張を述べ続けたこと(4月16日)が思い出されます。