30代以上・未婚・子ナシ…は「女の負け犬」 女性の“お一人さま”像、20年でどう変化?
「30代以上・未婚・子ナシ」は「女の負け犬」で注目を浴びた酒井順子さんのベストセラー・エッセー「負け犬の遠吠え」(講談社)が、2003年に発売され、20年以上が経過しました。発売当時の“お一人さま”像と、令和時代の“お一人さま”像ではイメージや解釈が異なってきています……。 【すごい】「うわ…さすがに生々しすぎるって…」 これが“真のセカンドパートナー”とした「身体的な接触」6個です!
お一人さま=自立した女性?
出版当時は小中学生だった筆者が、同書のメインターゲットとなる年齢になって読んだところ、本書におけるファッショナブルで凛(りん)としたお一人さま像に驚きました。というのも、筆者の世代はお一人さまについて自由をある程度楽しみつつも、経済的には十分なゆとりがない人が多いというイメージを抱いているからです。 当時の2003年と比べて、現在は結婚しない生き方も選択肢の一つとみなされるようになり未婚女性は生きやすくなった“はず”…。とはいえ、現在のお一人さまは年齢を問わず仕事、お金、老後、住まいなど不安は尽きないと見てとれます。 30歳前後の多くが、お一人さまという言葉は近年における流行語と誤解しがちですが、この言葉は私たちの親世代が結婚適齢期の頃からすでに使われていました。この言葉を最初に使い始めたのは岩下久美子さんです。彼女は1992年2月に「おひとりさま向上委員会」を設立し、2001年には「おひとりさま」(中央公論新社)という本を出版しています。この本では、お一人さまについて次のように定義されています。 「自分自身のモノサシで、自分にとって必要なものを取捨選択していける。そういう才覚のある人が『おひとりさま』だ」(101頁) 岩下さんが考えるお一人さまとは、独り立ちしている女性であり、自分のご機嫌も自分でとれ、経済的にも自立している女性です。この本は単身女性のハウツー本のようなものですが、都内一流ホテルのステイ方法、カフェタイムの過ごし方などハイソな内容となっています。恋も仕事もバリバリこなす女性をターゲットとしているのは明確です。 そして、酒井さんの「負け犬の遠吠え」に描かれるお一人さまの姿も、岩下さんのお一人さま像と重なります。酒井さんが描くお一人さまについても、仕事もそう悪くないものが見つかり、お給与もそこそこもらえ、ファッションや旅行、習い事などに自己投資をしていて、人付き合いもあり、男性から恋心を抱かれる女性がイメージされているように思います。 これらのお一人さま像は2000年代初頭のトレンディードラマに登場した女性たちに重ねられます。例えば、2005年に放送された「恋の時間」(TBS系)における主人公・雪枝(黒木瞳さん)は女一人で生きている会社経営者で、部下からの信頼が厚く、仕事を生きがいにしており、おしゃれな洋服がトレードマークとなっていました。エリート男性から恋心を抱かれるなど恋愛模様が展開されました。 2008年に放送された「Around40~注文の多いオンナたち~」(TBS系)では、精神科医として病院からも患者からも信頼が厚く、恋もそこそこし、経済的に余裕がある聡子(天海祐希さん)という未婚女性の姿が描かれました。両作品には、専業主婦のキャラクターも出てきますが、夫に生活を依存している傾向にあり、自由に使えるお金はあまりない様子でした。 岩下さんや酒井さんの著書は未婚女性にエールを贈り、未婚女性が主人公のドラマは“結婚しない生き方”があることを肯定しているものの、普通の未婚女性にとっては自分事として捉えにくいように思います。 また、雪枝や聡子のような女性が「私、負け犬よ!」と自嘲すれば、周囲はそれを面白おかしく受け止められますが、本当に負け続けている女性が自らを“負け犬”と自称すれば周囲はどう返すべきか困るのではないでしょうか。