30代以上・未婚・子ナシ…は「女の負け犬」 女性の“お一人さま”像、20年でどう変化?
約20年でお一人さま像はどのように変化した?
2000年代初頭は、女性の選択肢は社会において仕事か結婚かの二択であったように思います。キャリアウーマンになるか、それとも結婚して母になるか。まるで、それ以外の生き方は認められていないかのように。 しかし、近年、仕事を生きがいにしているわけではなく、経済力が平均以上あるわけでもない、“普通のお一人さま”にもようやく着目されるようになってきました。 ここ数年のドラマに登場する30~40歳代の未婚女性のタイプは2000年代初頭と比べて大きく異なります。例えば、2021年から放送が始まったテレビ東京の人気シリーズ「ソロ活女子のススメ」の主人公・五月女恵(江口のりこさん)は出版社の契約社員です。彼女は仕事はほどほどにこなし、ソロ活ライフを楽しんでいます。 また、同年に放送された「最高のオバハン中島ハルコ」(東海テレビ・フジテレビ系)では、小規模の出版社に勤務するいづみ(松本まりかさん)が経済苦や結婚できない現実を嘆きながらも、ハルコ(大地真央さん)のそばで奮闘し、弱音を吐きながらもたくましく生きる姿が描かれています。最近のドラマでは、経済状況にかかわらずお一人さまライフを楽しむ女性、お金がなければ、恋人もいない日々を懸命に生き抜く女性が描かれている傾向にあります。 さらに、トレンディードラマ特有の華やかな未婚女性のキャラクターをどこか冷めた目で見ていたアラフィフ以上の未婚女性たちが共感できる作品も出てきています。例えば、NHKで放送された「団地のふたり」の野枝(小泉今日子さん)と奈津子(小林聡美さん)に自分を重ねたり、彼女たちの明るさに元気をもらったりした人は多いはずです。
先の見えない将来が不安?
アラフィフ、アラカンの女性の親世代は皆婚社会に属している世代ですし、アラサーの女性の親世代も8割ほどが結婚している世代です。お一人さまの中には自分にとって身近な女性である祖母や母に倣って生きるわけにもいかず、暗い洞窟の中を恐る恐る進んでいるような人も多いと見てとれます。 その中で、お一人さま女性のロールモデル不在に悩む声も挙がっています。独身女性の多くはお一人さまとしてかっこよく生きる姿や、老後を一人で謳歌(おうか)する先輩女性たちの姿を見たいのではありません。将来住む場所、老後の生活費、入院中の生活などについて考えると不安になるため、単身者の老後のライフスタイルについてイメージできるようになりたいと考えているのです。 お一人さまは給与を自分のためにだけ使えるから経済的に余裕があるという見方がされることもありますが、むしろ単身者は経済的に厳しい傾向にあります。厚生労働省の「令和5年版 厚生労働白書-つながり・支え合いのある地域共生社会」によると、「独身者の利点」として「経済的に裕福」と回答した女性は1990年代前後から2021年までの調査の中で20%に達する年はほとんどありません。 さらに、最近は、既婚者よりも未婚者の方が経済的に厳しいという意見が強くなってきています。筆者もキャリアウーマンといわれる女性の方が夫も子どもも手に入れている傾向があるように思います。特に、近年は育休制度が整った企業や在宅勤務を選択できる企業も多いため、その傾向は強まっているといえるでしょう。 現在、社会においてさまざまなお一人さまの存在が認知されているだけでなく、SNSやYouTubeなどで自分と同じ立場の女性の存在を知ることもできます。その一方、単身で生きることを決めた女性たちが安心できる制度の整備や、知っておくべき知識の普及は追いついていないといえます。 ※本文を一部修正しました(1月6日11時49分)
西田梨紗