尾身氏「全国的増加、間違いない」 対策強化せねば「急速な拡大傾向の可能性高い」―政府分科会
政府の新型コロナウイルス対策分科会の尾身茂会長(地域医療機能推進機構理事長)が9日、緊急記者会見を開き、「現下の感染状況は一言で言えば、徐々に感染が全国的に見ても増加しているのは間違いない」と述べた。 【動画】コロナ分科会の尾身会長が会見 感染再拡大で緊急提言
尾身会長は「社会経済活動が社会の要請ということで戻りつつある中で、適切な感染防止策が講じられなければ感染の増加要因が強まり、その『増加要因』力が人々の感染防止対策、自治体や保健所、医療機関が頑張っているクラスター対策(などの)『減少要因』を上回っている。減少要因を早急に強めなければ、急速な拡大傾向に至る可能性が高い」と訴え、警鐘を鳴らした。 さらに「(これまでは)致死率や重症化率を抑えられてきたが、医療提供体制への負荷を過大にしないためにも可及的速やかに感染を減少方向に向かわせる必要がある」とも訴えた。
分科会が提言する「5つのアクション」
会見で、尾身会長は緊急提言として、「社会経済活動と感染対策を両立できるよう国民、自治体、国に求められる5つのアクションをまとめた」と発言。尾身会長が説明したアクションは以下の通り。 【アクション1】:いままでよりも踏み込んだクラスター対策 クラスターの数が多様化しており、(1)早期に探知しにくいクラスター(2)閉じにくい(感染拡大を止めにくい)クラスター、が増加している。 前者の具体例は、一部の外国人コミュニティや、大学生の課外活動など若年層を中心としたクラスター。外国人コミュニティは、言葉の問題があり、医療へのアクセスが難しい。大学生の課外活動は、若い人は感染しても無症状や軽症の人が多いため探知されにくい。 後者の具体例は、接待を伴う飲食店など、感染者が不特定多数で濃厚接触者の把握が難しいもの。 【アクション2】:対話のある情報発信 「3密」の状況や「大声」が感染リスクを高めることは、ほとんどの人が知っている。最近では(1)感染が高まる5つの場面(2)感染リスクを下げながら会食を楽しむ工夫――などを発信してきたが、こうしたメッセージが人々の実際の行動変容、維持につながるほど十分に伝わっていない。人々の受け止め方を理解したうえで、政府には情報発信してもらいたい。 具体的な場面として、例えば会食の時も、マスクは食べるときだけ外し、会話に戻るたびに随時つけ直すといった工夫も一例として考えられる。 【アクション3】:店舗や職場などでの感染防止策の確実な実践 業種別ガイドラインの作成が現場でも進んできたが、相変わらず店舗・飲食店などでクラスターが起きている。都会だけでない。休憩所や喫煙所がどこにあり、どういうところで上記の「5つの場面」があるのか、など具体的なセッティングで考えてもらいたい。地元の商店街とも連携すべきであるほか、ガイドラインを変えていくのも当然。 【アクション4】:国際的な人の往来に伴う取り組みの強化 海外との交流が徐々に再開される中で、水際対策と地域での対策を連動していく必要がある。国内に入った後に保健所が行う健康監視で、多言語対応の必要がある。個別の保健所だけでは極めて困難。事務の増大などにつながり、保健所業務に支障をきたす。 国は、検疫所における滞在国・地域別検疫実施人数、検査実施人数、陽性者数などの情報を迅速に整理して公表することが非常に重要。入ってくる外国人をフォローアップする仕組みは自治体単独ではできない。 【アクション5】:感染対策検証のための遺伝子解析の推進 ウイルスの遺伝子配列を調べることは、感染伝播の状況が見えなくなっている地域の感染由来を調べる上で重要。配列を調べることはクラスターの由来を明確にするだけでなく、感染対策を検証するためにも有効。そのために、地方衛生研究所を通じて、国立感染症研究所に確実に検体を送付することなどが必要。