考察『光る君へ』38話 中宮・彰子(見上愛)と近過ぎる敦康親王(渡邉櫂)の元服を急ぐ道長(柄本佑)…『源氏物語』という虚構が、現実に影響を及ぼし始めた
敦成親王呪詛
寛弘6年(1009年)。敦康親王(渡邉櫂)11歳。まもなく元服……藤壺から出てゆかねばならぬので嫌だという敦康親王に、彰子は、 「ゆくゆくは帝になられる敦康様ですゆえ。ご元服されねば」 中宮である自分が皇子・敦成(あつひら)を産んでも、一条帝第一の皇子である敦康が次の東宮、そして即位することを露ほども疑っていない彰子の言葉に、行成(渡辺大知)の表情が曇る。36話、皇子誕生前は彼もそのように考えていたのだが、いざ敦成親王が生まれてみると、そうも言い切れなくなってきたということだろうか。 敦康親王と敦成親王。ふたりの皇子が存在する藤壺で、事件が起こる……敦成親王呪詛である。 慌てて異変を知らせにきた百舌彦(本多力)から厭符(えんぷ)を見せられて瞠目し、体がぐらりと揺れる道長。11話(で一条帝即位の高御座に呪符代わりに置かれた子どもの生首を取り除き「穢れてなぞおらぬ」と言った男だ。穢れや呪いの類を信じていない。しかし、32話で安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)から「呪詛も祈祷も、人の心のありようなのでございますよ」この言葉を聞いた後は、呪詛に対する考えは変わっただろう。 愛娘・彰子の息子、自分の孫である敦成を呪うほど、その存在を憎んでいる者がいる。その事実に戦慄を覚えるのだ。政治家として予想しなかったわけではないだろうが、いざ厭符という現物をつきつけられると心乱れずにはいられない。 捜査の結果、呪詛の実行犯として円能が捕らえられ、主犯が明らかになった。「呪詛の依頼者は伊周(三浦翔平)の縁者であり……」とナレーションがあったが、これは前回・37話で敦成親王誕生により敦康親王の東宮立太子が脅かされることを危惧し「このままではおられませぬ!」と伊周に訴えていた高階光子(兵藤公美)と源方理(阿部翔平)である。首謀者が伊周本人ではないため、陣定でも高階光子らについては死罪か否か、明法博士の勧進に従うべき(※法律の専門家に先例を調査させ報告に従うべき)という意見で統一されたものの、では円能の自白に名前が出てこなかった伊周はどうするか? という道長の問いには、全員がちらりと隆家(竜星涼)の様子を窺い黙り込む。 厳罰に処して、これ以上恨みを買うことは避けたいという道長の判断により、高階光子らは官位剥奪、伊周は参内停止という処分でこの件は落着した。
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