株の相続税はいくらかかる? 評価や計算方法、節税について税理士が解説
6. 株の相続税や株の相続全般に関してよくある質問
Q:株の相続税はいくらから発生? かからない場合はある? 株を相続しても、他の相続財産とあわせて基礎控除(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人数)以下なら相続税がかかりません。 例えば、夫・妻・長男・長女の家族で仮に夫が亡くなった場合、基礎控除は4,800万円(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人3人)です。そのため、株を含めた相続財産が4,800万円以下なら相続税は発生しません。 また、非上場株式の場合には、発行会社が金融機関などからの借入金が多い債務超過状態の場合には評価額が0円となります。この際も、株の相続税はかかりません。ただし、株を持っている経営者が会社へ資金を貸している場合、その貸付金は相続財産の対象になるため、注意が必要です。 Q:株をそのまま相続するのと現金にしてから相続するのはどっちがいい? 株をそのまま相続するのと現金にしてから相続するのではどちらがいいかは、すべての相続財産の内容、具体的な株の銘柄や株価、納税資金の額などによって変わります。 株をそのまま相続する場合と現金にしてから相続する場合では、そもそも相続税の評価額の計算方法が異なります。現預金は100%課税されることになるため、相続税が高くなりがちです。 一方、株は常に値動きをしており、評価時に株価が高ければ、その分相続税の負担は大きくなります。その納税資金をまかなうために売却をしようとしたら、今度は値下がりしていて納税資金が思ったほど手に入らない場合もあります。 株と現金どちらがよいかはケースバイケースですが、株の相続においては、知識や経験が豊富な人の方がリスクを軽減できる可能性が高いでしょう。 Q:自社株の評価額が高くて相続税が払えないときはどうしたらいい? 自社株の引き下げ対策などを試みても自社株の評価額が高く、相続税が払えないこともあるでしょう。相続税は一時に現金で納付するのが原則ですが、延納や物納の制度があります。 延納は、相続税額が10万円を超え、納付期限までに金銭で納付することが困難な場合、納付を先送りできる制度です。物納は延納でも金銭で納付することが困難な場合に、相続財産そのもので納付ができる制度です。 ただし、延納や物納は、納付期限までに申請が必要なほか、さまざまな条件があるため、実際の活用にはハードルがあります。できるだけ事前の対策(株価を下げる、保険や融資で備えておくなど)で納税資金を確保しておくことをおすすめします。
7. まとめ スムーズな株の相続には早めの事前対策がポイント
株は一日でも値動きするものです。そのため、株価が上がっても下がっても、相続税の負担で納税資金と相殺されてしまうこともありえます。 株をスムーズに相続するには、事前の対策ができるかがポイントです。ただ生前贈与をはじめ、これらの対策は時間的な制限が多くあります。いまのうちからできそうなことがあれば、早めに行動しましょう。 (記事は2024年6月1日時点の情報に基づいています)
中島典子(税理士・社会保険労務士・CFP)