株の相続税はいくらかかる? 評価や計算方法、節税について税理士が解説
被相続人(亡くなった人)が保有する株を引き継ぐとき、株価に応じて相続税が発生することがあります。ただし、株によってかかる相続税額は、現在の株価だけでなく株の種類などによっても変わります。この記事では、株の相続税はどのように決まるのか、節税対策には何があるのか、相続に強い税理士が解説します。
1. 株の相続税はいくらかかる? 計算の大まかな流れ
株にかかる相続税は、一定の計算方法によって算出されます。計算の大まかな流れを見ていきましょう。 1-1. 1株あたりの評価額(株価)を算出 株の相続税を算出するときは、1株あたりの評価額(株価)を、法律で決められた方法を用いて算出するところから始まります。この手続きを評価と言います。 株の相続税は算出した株の評価額が低ければその分低くなりますが、株を低く評価しすぎた場合(例えば本来1株5万円の株を1万円で評価したなど)、後に延滞税や過少申告加算税といった本来払わなくていい税金が課される可能性があります。そのため、株の評価は、きちんとした手続きにもとづいて行わなければいけません。 株の評価方法は、上場されている企業の株(上場株式)か、上場されていない非上場企業の株(非上場株式)かで大きく分かれます。 ■上場株式の場合 上場株式の場合、株が株式市場に公開されている(一般の投資家が自由に売買できる状態になっている)ため、取引相場というものがあります。評価するときは、その取引相場を利用します。 取引相場は、証券取引所にある株式相場表や上場企業のHP、インターネット(「会社名 株価」で検索)などで調べられます。また、相続手続きの際、証券会社から受け取る残高証明書で確認することも可能です。 相続税を算出するときは、次の①~④のうち最も低い金額を取ります。 ①相続発生日の終値(最終価格) ②相続発生月の毎日の終値の月平均額 ③相続発生月の前月の毎日の終値の月平均額 ④相続発生月の前々月の毎日の終値の月平均額 なお、相続した株がA株とB株である場合には、それぞれの銘柄ごとに評価します。 ■非上場株式の場合 非上場株式の場合、上場株式のように株式市場に公開されておらず、取引相場がないため、評価するときは財産評価基本通達という国税庁が決めた方法を用います。 評価方法にはいくつかあり、相続によって株を引き継いだ人が、どのような株主かによって用いる方法が違います。株の発行会社の経営支配力を持っている同族株主等なら「原則的評価方法」、それ以外の株主なら「配当還元方式」で評価します。 ・原則的評価方式 原則的評価方式は、株の発行会社を業種・従業員数、総資産価額、取引金額をもとに、大会社、中会社、小会社のいずれかに区分し、それぞれの会社において定められた方法で評価をする方法です。 大会社:類似業種比準方式 中会社:類似業種比準方式と純資産価額方式の併用 小会社:純資産価額方式 ※類似業種比準方式:株を評価する会社と業種が類似している類似業種の株価をもとに評価する方法 ※純資産価額方式:評価対象会社の純資産価額を発行済株式数で割って株価を求める方法 ・配当還元方式 配当還元方式とは、その株を所有することで受け取る配当金額から評価する方法です。直前期末以前2年間の配当金額を1/2にした金額を、10%の利率で還元して評価します。同族株主以外の株主の場合、発行会社の規模にかかわらず用います。 ・評価対象会社の状況によっては異なるルールが適用される 評価対象会社の状況によっては、異なるルールが適用されます。例えば、その会社が開業前または休業中の場合は、株主によらず純資産価額方式を採用します。清算中の場合は清算分配見込額により評価します。 1-2. 1株あたりの評価額に保有株数を掛けて全体の評価額を算出 次に、1株あたりの評価額に、それぞれの保有株数を掛けて全体の評価額を算出します。例えば1株2,000円のA株を1,000株、1株6,000円のB株を3,000株持っている場合は以下のとおりです。 A株:2,000円 × 1,000株 = 2,000,000円 B株:6,000円 × 3,000株 = 18,000,000円 合計:20,000,000 円 1-3. 全体の評価額に規定の税率を掛けて相続税を算出 株を相続した場合の相続税の税率は、株以外の預貯金や不動産などを含めたすべての相続財産の評価額によって違ってきます。 相続税の速算表 つまり、株以外の財産の評価額に、株の評価額が加算されるため、株の評価額によってはより高い税率がかかることがあります。株を売却して納税資金にしようと考えている場合には、評価額によっては納税資金が不足する可能性もあるため注意が必要です。