定食屋の魅力は「さもない料理」にある… 食を愛する文筆家が“おいしい”を語り合う
以前は別の仕事についていた二人
大平:その時は文章の仕事は考えてなかったんですか? 原田:そういうのもできたらいいなって思ったら、20代の後半、私、秘書の仕事してたんですけど、秘書は当時、年とってから長くできるような仕事じゃなかったし、何か別のことできないかなって探している時期だったんですね。 大平:人生で探した時期って何年くらいあったんですか? 原田:26歳から28歳くらいからずっと。29歳か30歳くらいで結婚して北海道に転勤したんで。それくらいですね。大平さんはそういうのありますか? 迷い時期というか。 大平:あります。私は愛知の短大で社会福祉を学んだ後、児童養護施設に勤めたんです。文章書きたかったけど文学部は行けなかったので、次に面白いものと考えた時に社会福祉だなって思って。 面白かったけど、やっぱり書く仕事もしたいって思って20歳から26歳までは迷いました。それで26歳で上京して、編集プロダクションに入って。 原田:そこから書く方に? 大平:はい。
フリーになって見つけた創作の「裏テーマ」
原田:そうなんですね。やっぱり台所の話とか食の話が多いんですか? 大平:いや、全然なんです。私、料理をテーマにした書籍はこれが初めてで。26歳から30歳くらいまで編集プロダクションにいて、出産と同時に退職したんですよね。子供を育てながら無理だなと思って。 で、フリーになったんですけれども、その時はがむしゃらに7~8年やって、やっぱりちょっと違うなという……。これは誰でもできるし、歳を取ったら若いライターさんに変わっていく。 自分しか書けないものって何だろうって思った時に、大量生産、大量消費に対岸にあるもの「今書いておかないと消えてしまうものを書こう」って決めたんですよね。それから取材中も、裏テーマがあるとちょっとだけ文章が変わるというか。 それを編集者の方が面白いって言ってくださったり、小さいものが重なって、書籍の話になって、著書は30歳から一冊ずつは出してたんですけど、この裏テーマにたどりつくまで5年くらいかかりました。