「僕らが本を積む理由」黒木許子さんが冬休みにしたいこと
年末年始の長い連休がスタート。せっかくだから“いい休みを過ごせたな”と思えるアイディアが知りたい。色んなジャンルのモノやコトに詳しいあの人に聞いた冬休みの過ごし方。ginzamag.comでもお馴染み、ライター・エディターの黒木許子さんは何をする? 【記事中の画像をすべて見る】
人はなぜ本を積むのか。高く、高く、なりたい自分を思い描きながら一冊一冊を重ねていく行為は、祈りにも似ている…。 この冬休みは、暖炉のそばでソファに転がりながら、ゆっくり積ん読を解消したい。今の100倍物知りになって「私、生まれ変わった!」と新年を迎えたい。けれど、きっとそうはならないと自分がいちばんわかっている。まず、家に暖炉がないし。 しかし、積ん読には向き合ってみたい。 積まれているそれぞれに、入手した理由、なのに読んでいない理由がある。さながらバランスアートのようにそびえたつ書物たち。その一部を取り出して、読書レビューならぬ「積みレビュー」をしようと思う。
図録の重みは感動の重み?
『ハニワと土偶の近代』 かつて大学の先生が言っていた。「展覧会のカタログには、書籍にならない寄稿が収録されているので実はとても貴重」と。最近はモノとしても魅力的な図録が多いので、ミュージアムショップで「貴重、貴重…」とつぶやきながら購入するのが流れ。『ハニワと土偶の近代』は、キュートな表紙に心がぎゅうっと鷲掴みに!そもそも無駄を削ぎ落とし切ったデザインのはにわフェイス。それがさらにシンプルな造形に落とし込まれていて、しかも立体!表紙をパタパタめくって表情を楽しむのに夢中で、貴重な文章まで進んでいない。
美しすぎる絵と、おかしすぎる世界観
伊藤潤二作品各種 2024年、日本漫画界の宝、楳図かずおが亡くなった。とても悲しいことだけれど、才能は新たな才能を育て、文化は続いている。伊藤潤二も楳図に憧れて漫画家を志したひとりだ。今年、仕事の関係で彼の『うずまき』を読むことがあり、その傑作ぶりに前のめりに。そこから他の作品も試し、じめっとしていないある意味ポップなホラーワールドに没頭。楳図や諸星大二郎を愛する父親にすすめてみたところ、どハマりし、最近は会うたびに「これも買ったので貸してあげます」と逆布教してくる。普段なら漫画はすぐさま読み切ってしまうのだけど、仕事が大変忙しくなり、なかなか手をつけられないまま師走。時間が全くないわけでもないのだが、疲れて帰った夜中に読むにはややヘヴィ。そしてもちろん結構怖いので、できれば日のあるうちに読みたい。