発表されたセンバツ甲子園「選考ガイドライン」の”曖昧さ”にネット炎上
さらに選考の責任者を務めた、東海地区の鬼嶋一司委員長の説明が火に油を注いだ。当時の報道によれば、慶應義塾大学野球部元監督の鬼嶋委員長は「個人の力量に勝る大垣日大か、粘り強さの聖隷クリストファーかで賛否が分かれた」と選考委員会の内情を明かした上で、投打で勝る前者を推薦校とした理由をこう語っている。 「特に投手力で差があった。春の選抜大会では失点の多いチームは厳しい。大垣日大は総合力の高いチーム。(日大三島と聖隷クリストファーが)静岡県同士ということはまったく考慮していなかった。甲子園で勝てる可能性の高いチームを選んだ」 これに静岡県高野連(高橋和秀会長)だけでなく、聖隷クリストファーのある浜松市の鈴木康友市長や静岡県の川勝平太知事も納得できないと反論。聖隷クリストファー野球部OB会は、大垣日大と入れ替えるのではなく、33校目の出場校として聖隷クリストファーを認めてほしいと署名活動を開始。3日で1万筆を集めている。 選考理由に「個人の力量」が含まれた点に、巨人やMLBのレッドソックスで活躍した評論家の上原浩治さん、パドレスのダルビッシュ有らもツイッターを介して反論の声をあげたなかで、日本高野連は2月10日に「これ以上の説明は差し控えたい」として、1月28日に発表した出場32校と補欠校は最終のものとした。 日本高野連は同時に選考のあり方や、経過の説明方法などを検討するとも明言した。果たして、約5ヵ月をかけてまとめられた選考ガイドラインは、特に選考ポイントで曖昧さがさらに増す内容となったとファンに受け止められている。 例えば(3)で「地域性も考慮する」と明記されているが、これは鬼嶋委員長の「静岡県同士ということはまったく考慮していなかった」という説明と食い違う。もっと踏み込んで言えば、大垣日大の選出を後付け的に認めさせるものにも映る。 全国規模で賛否両論が沸き上がった理由は、これまでにも不可解な選考が何度かあったなかで、選考の客観性が求められたためだが、これに対しても(2)で掲げられた「野球に取り組む姿勢」や「戦力のバランスやチームの潜在能力、大会を通しての成長ぶり、チームワーク」には、どちらかと言えば主観的な要素が多く入り込んでくる。 重要ながらも参考資料のひとつとされた秋季大会も(1)で「試合結果、試合内容をもとに評価する。その割合は同程度とし、総合的に判断する」と定められたが、内容を評価する上でのポイントが明示されていない以上は、選考委員の主観に委ねられる。府県大会よりも地区大会を優先するとした(4)も残念ながら説得力を伴わない。 選考ガイドラインは来春の第95回記念大会から適用されるが、日本高野連は選考過程のあり方などについて引き続き議論を重ねていく方針も示している。曖昧さが排除されるどころか、文字としてより色濃く残されたガイドラインは、球児たちにさまざまな影響を与えた不可解な選考が再び繰り返される余地を残してしまった。