センバツで誤審を認め謝罪した審判団の異例“英断”は高校野球の改革を象徴する出来事なのか…リプレー検証導入を求める声も
甲子園で開催されているセンバツ高校野球で20日、審判団が誤審を認めて謝罪と同時に判定を覆すという異例の事態が起きた。広陵(広島)対敦賀気比(福井)の1回戦でバントのフェア、ファウルの判定を巡って塁審が起こした不手際を直後に訂正、謝罪したもの。過去に誤審騒動は何度もあったが判定を覆すことは稀で、ましてマイクを使って謝罪することも異例だ。これも高校野球が向かっている新たな流れなのか。ネットや関係者からは、これを機にリプレー検証を導入すればどうかという意見も聞かれた。
バントの判定を二塁塁審がファウルと誤審
大英断だろう。センバツで新しい高校野球の歴史が刻まれるようなシーンがあった。2―0で迎えた4回裏の広陵の攻撃。広陵ベンチは無死一塁から大山陽生(3年)にバントのサインを送った。大山は、2球目を一塁のライン沿いへ絶妙のゴロを転がした。ボールはほぼライン上。一度、ファウルゾーンに切れかけて、大山も一塁へ走るのをやめかけたが、ボールはイレギュラーな動きをしてフェアゾーンに戻った。 尾崎球審がフェアの判定をしたため大山は再び一塁へ走り出したが、一方で、荒波二塁塁審は、両手を広げるファウルのジェスチャーをしてわざわざ走路の中に入って一塁走者の川瀬虎太朗をストップしていた。 川瀬は、それを見て二塁に背を向けて一塁へゆっくり“逆走”していたが、守備陣の動きからフェアの判定だと知り、あわてて二塁へ再スタートした。 だが、ゴロを処理した一塁手が、まず打者走者をアウトにすると、そこから、一、二塁間にいた川瀬を挟殺プレー。4-6-1とボールが渡って最後は投手が川瀬にタッチした。一度はファウルを宣告していた荒波塁審が、なんとアウトを宣告した。 2死走者なしとなり、次打者が打席に入ったが、アウトを宣告された川瀬主将が尾崎球審に「疑義」を伝えた。高校野球では、監督に抗議権はないが、主将や伝令を通じての「疑義」を伝えることは認められている。尾崎球審は、ダイヤモンド内に審判団を全員集めて協議。異例の結論を出した後に尾崎球審がマイクを持ち場内に説明した。 「ただいまのプレーについて、ご説明いたします。打球がイレギュラーバウンドでフェア地域に転がりまして、フェアの判定を下しました。しかしながら、二塁の塁審がそれを誤ってファウルのジェスチャーをしてですね、ランナーを止めてしまいました。守備は、とった打球を打者走者を一塁でアウトにしようとした守備行為でしたので、私たちの間違いでして、止めた走者を守備行為ではなかったので二塁に進めて1アウト二塁で再開します。大変申し訳ございません」 誤審を認めて、一度下した判定を撤回、そして両軍ベンチ並びにスタンドのファンに対して異例の謝罪を行ったのだ。 異例の措置に場内は騒然。そして拍手が生まれた。守備陣の動きから塁審の誤審がなくとも、送りバントが成立していたと判断し、打者走者はアウトで、一塁走者は二進を認めて1死二塁から試合を再開した。 結局、続く森山陽一朗、中川将心と二者が凡退して広陵は追加点を奪うことはできなかったが、続く5回に来年のドラフト候補としてプロが注目している2年生スラッガー真鍋慧の犠飛などで4点を追加した広陵が、この試合を9-0で制した。 公認野球規則の審判員の項目8・01(c)で「審判員は、本規則に明確に規定されていない事項に関しては、自己の裁量に基づいて、裁定を下す権限が与えられている」とされており、その自己裁量権において、今回の異例の誤審の訂正が行われた。