歴史的事件!甲子園で審判の判定が覆ったのは高校野球変革へのサインなのか?
これが通常の形ではあるが、まだまだ前近代的な部分の残る高校野球において超異例の事件と言っていい。激闘となった16日の甲子園での明石商対宇部鴻城の3回戦で、重要な局面で一度下った「アウト」の判定が「セーフ」に覆る事件があった。 場面は2-2で迎えた延長10回裏無死一塁。明石商の岡田光がバントを試みたが、これが投手の正面へのゴロとなった。エースの左腕、池村健太郎は打球を処理すると素早く二塁へボールを送った。タイミングはアウト。だが、ワンバウンドになったボールは二塁をカバーしたショートの古川胤志のグラブの先をかすめてこぼれ、太ももの下にはさまれる形で止まった。一瞬、アウトと考えた古川がボールの入っていないグラブを上げてアピール。 そこがちょうど“死角”になっていたため、塁審は、完全捕球後にボールがこぼれたと判断してアウトの判定を下した。だが、一連のプレーを見ていた戸塚球審が、判定を問題視、即座にバックネットに設置してある電話で、試合をチェックしている審判委員と連絡を取って捕球をしていなかったことを確認した上で4人の審判を集めて協議、判定を「セーフ」と覆した。 明石商の応援団がどっと沸く。 戸塚球審は、場内マイクを使って「ただいまの判定につきまして説明させてもらいます。投手から遊撃手に送球されましたが、遊撃手がボールを落球しておりましたので完全捕球とはみなされずノーアウト二塁、一塁で再開します」と異例の説明を行った。 結局、記録は投手のエラーとなり、その後、一死満塁へと場面が変わり、明石商のサヨナラスクイズにつながるわけである。 もし判定を覆すことなくアウトのままなら明らかな誤審。明石商のサヨナラスクイズも生まれなかったかもかもしれないし、どんな勝敗であれ、大問題に発展したことは間違いない。だが、戸塚球審の“勇気ある決断”で判定が覆った。全国大会では過去にほぼ例を見ない「判定変更」で名勝負に水を差すことはなかったのである。 高野連は「相手の抗議ではなく、一度はアウトと判断されたが、球審が審判委員に確認を行い、4人が協議し正しい方向に訂正した」と説明した。