「やせ薬」がアルコール依存症に効く可能性、禁煙や薬物依存症の治療の助けにも
なぜアルコールへの渇望を抑えるのか
減量を助けるために設計された薬が、どのように物質使用障害の治療に効果をもたらしているのかは、完全には解明されていない。 「GLP-1薬は、脳内で特に報酬系のドーパミン経路に影響を及ぼします」と、「Addiction」に掲載された論文の著者の一人であり、米ロヨラ大学シカゴ校パーキンソン健康科学・公衆衛生学部の生物統計学准教授ファレス・キーダン氏は言う。「GLP-1薬はこれらの経路を調節して、渇望を抑え、依存性物質がますます欲しくなる効果を減らしていると思われます」 しかし、おそらくはドーパミンへの影響がすべてではないと、専門家は指摘する。「食事による満腹感に関わるメカニズムが、アルコールにも関係しているのかもしれません」と、米国立衛生研究所(NIH)の医師・科学者で、米国立薬物乱用研究所の臨床ディレクターを務めるロレンツォ・レッジオ氏は言う。 つまり、GLP-1薬は、人が満足感を得るのに必要な食べ物やアルコールの量を減らす可能性があるということだ。 この理論によれば、そうした効果は、アルコールであろうと薬物であろうとニコチンであろうと、物質の種類に関係なく起こることになる。 さらに、「GLP-1薬は、一部の薬をより不快に感じさせる可能性があります」と、米テキサス大学ヒューストン校の精神医学准教授ルバ・ヤミン氏は指摘する。 氏は現在、禁煙の補助や禁煙後の体重管理を助ける治療法としてGLP-1薬が使えるかを評価する臨床試験の研究主任を務めている。「たとえば、この薬を使っている人は、喫煙中に吐き気を感じるかもしれません」 以前の研究で、ヤミン氏らは、長時間にわたって放出されるGLP-1薬とニコチンパッチの併用が、糖尿病予備軍や肥満の人々の禁煙をどれだけ助ける効果があるかを調べた。 参加者はプラセボ(偽薬)かGLP-1薬をランダムに割り当てられ、ニコチンパッチは全員が使った。6週間後、GLP-1薬を投与された人々は禁煙を続けている可能性が高く、渇望や禁断症状も少なかった。