日本人のルーツを探れ! 台湾~沖縄、3万年前の航海は再現できるか
THE PAGE
はるか昔、日本人はどこからやってきたのだろうか。日本人のルーツを探るため、草ぶねで台湾から沖縄へと航海する「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」がクラウドファンディングで資金を集めている。プロジェクトを率いるのは、国立科学博物館 人類研究部の海部陽介・人類史研究グループ長。なぜ、祖先の航海を再現しようとするのか、海部グループ長に話を聞いた。
「実はとてつもない」台湾から沖縄への航海
「これは、単なる冒険プロジェクトではありません。3万年前の移住を再現しようとしているのです」と海部グループ長は力を込める。 約20万年前、アフリカに登場した現在の人類(ホモ・サピエンス)は、その後世界各地へと拡散していく。海部グループ長によると、日本には、サハリンから北海道・対馬列島から九州・台湾から沖縄という3ルートを通じてわたってきたとみられるという。このうち、沖縄ルートは、当時大陸と地続きだった台湾から、海を越えて沖縄に到達するコース。海を渡る方法は、舟しか想像がつかない。 「しかし、舟で渡る、ということの難しさをきちんと考えると、実はとてつもないことなのです。とても『舟で行きました』という一言で収まる話ではありません」。 台湾から沖縄にいたるには、たとえば台湾から与那国島、そこから石垣島・西表島の先島諸島、さらに宮古島、沖縄本島へと、何度も航海する必要がある。台湾から与那国島にいたるには、途中で流れの速い黒潮を横断しなければならない。定住して子孫を残すということは、少人数の漂流ではなく、比較的若い年代の男女が相当数参加した意図的な移住だったのではないか。 祖先の時代には海図も気象情報もなかったはず。いったい、どの程度の規模の航海で、どれほど困難だったのか。こうした疑問は、海部グループ長の専門の範囲を超えていた。そこで、他分野の専門家とチームを組んで祖先のチャレンジを徹底追及しようと考えるにいたる。知人の研究者らに声をかけ、2013年にこのプロジェクトを始動させた。 メンバーには、代表に就任した海部グループ長をはじめ、さまざまな分野の学者と冒険家ら計26名が名を連ねる。たとえば、3万年前の黒潮に関する研究は古海洋学の専門家が、舟の製造は冒険家兼草舟職人が担うなど、メンバーのそれぞれが得意分野を生かしながら、3万年前の航海の謎解きに挑む。 これまで、3回の研究会を開催するとともに、候補となる古代舟の試験製作を行ってきた。3万年前の航海に使用された古代舟は発掘されておらず、現時点で何が使用されたのかは不明。そこで、地元で手に入りかつ当時の道具で作れることなどの観点から、現時点で草舟か竹いかだを有力候補としている。