脳性まひの子どもたちにも中学受験が増加 入試の壁を突破しても入学後にも懸念が
「インクルーシブ」「インクルージョン」という言葉を知っていますか? 障害や多様性を排除するのではなく、「共生していく」という意味です。自身も障害のある子どもを持ち、滞在先のハワイでインクルーシブ教育に出合った江利川ちひろさんが、インクルーシブ教育の大切さや日本での課題を伝えます。 * * * 12月に入りました。もうすぐクリスマスやお正月など、1年で一番華やかな時期になりますね。一方で、多くの私立中学や高校、大学では本格的な受験シーズンに入ります。我が家にも高3の受験生がいますが(この原稿を書いている時は推薦入試の結果待ちの期間です)、娘と同じように私もずっと落ち着かない日々を過ごしています。今回は受験について書いてみようと思います。 ■脳性まひ児も受験に挑戦 ここ数年、障害のある子どもの「受験」の話を聞く機会が増えたように思います。10年程前は、障害があると公立の通常学級への入学も難しかったのですが、インクルーシブ教育という言葉が普及し、時代が大きく変わりました。実際、私が運営しているNPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもとパパママの会)に登録されているお子さんたちも、中学受験や大学受験をする方がどんどん増えています。多くの場合は、入学後に障害特性から来る困りごとが起きると、私立ならではの手厚さで学校が寄り添いながら一緒に考えてくださったり、健常のお子さんにとっても多様性を知る場面になったりしているようです。学ぶ力のある子どもたちのために大きな扉が開いたような印象があり、とても嬉しく思っています。 でも一方で、少子化による定員割れを埋めるために「いても良いよ」という認識で合格が出るケースもあります。児童発達支援センターや特別支援学校は、当然ながら特別支援の目線で子どもたちと向き合い人員も多く配置されていますが、私立幼稚園や私立小中学校では異動がないために特別支援の現場に慣れていない先生も多く、さらに限られた人員でクラスの子どもたち全員が安心・安全に過すことができる環境をつくる必要があり、幼稚園や学校にとって知識不足やマンパワー不足は、もしかすると定員割れよりも大きな負担になる可能性もあるのです。中には障害のある子どもがクラスで孤立してしまうケースも散見し、最悪は退園や退学になってしまうこともあります。これでは、せっかく幼稚園や学校がインクルーシブ教育の扉を開いても誰も幸せになりません。障害のある子どもも先生も保護者も負担なく園や学校で過ごすためには、人員確保や研修のための助成など、マクロ的な視点が不可欠だと思っています。