〈目撃〉ライオンを狩る「戦闘ワシ」、初の詳しい報告 ケニア南西部のゴマバラワシ
英名は「マーシャルイーグル」、ヒョウやチーターを狩った記録も
ケニアにあるマサイマラ国立保護区のツアーガイドが、サバンナの頂点捕食者の仲間であるライオンを狩るゴマバラワシを目撃した。ゴマバラワシはライオンの群れを何週間も追い続け、チャンス到来と見ると急降下して子どもに襲いかかり、合わせて3頭を捕らえた。2012年12月の出来事だった。 【関連写真】子ライオンを狩る「戦闘ワシ」(閲覧注意:残酷な描写あり) 「このワシは明確にライオンを狙っています」と、オランダ、ワーゲニンゲン大学の博士候補生であるリチャード・ストラットン・ハットフィールド氏は話す。氏と同僚の研究者たちは、この例をはじめとして、チャンスがあればゴマバラワシ(Polemaetus bellicosus)はライオンの子どもを狙うと2024年9月13日付けの学術誌「Ecology and Evolution」で報告した。 百獣の王たるライオン(Panthera leo)は、陸上においては最強の動物かもしれない。しかし、空の生き物を含めて考えた時、彼らは必ずしも食物連鎖の頂点に立っているわけではないことを、この報告は示している。 「これはまさにゴマバラワシが獰猛なハンターである証しです」と、ハットフィールド氏は言う。ゴマバラワシの英名は「マーシャルイーグル」。意味は「戦闘ワシ」だ。
アフリカの空の女王
ゴマバラワシが翼を広げた長さ(翼開長)は1.8メートルを超える。体重はメスの成鳥の場合4.5キロ以上で、オスの成鳥は概ね3キロ前後だ。 大きさと生態はイヌワシに似ているが、獲物はイヌワシよりも大型であることが多い。ゴマバラワシは獲物を見つけると急降下し、鋭い爪を獲物の首の後ろから脊椎に食い込ませる。自分よりはるかに重いインパラやガゼルの子どもを狙うこともある。 「ゴマバラワシの爪は非常に殺傷能力の高い武器です」と、ハットフィールド氏は言う。「彼らのハンターとしての能力には本当に驚かされます」 ゴマバラワシが他の捕食動物を獲物にしていることにハットフィールド氏らの研究チームが気づいたのはつい最近のことだ。2012年の分も含め、ゴマバラワシがライオンの子どもを襲った事例をチームは7件記録している。 捕食したのは合計で9頭。1頭はすんでのところで取り逃がした。若いゴマバラワシが関わっている事例が2件あるものの、狩りをしたのはほとんどの事例で体の大きいメスだろうとハットフィールド氏は考えている。 最も古い記録は2008年だ。捕らえたばかりの子ライオンを食べている姿を写真家が撮影した。最新の記録は2023年で、飛んで運び去るには大きすぎるほどの子ライオンを捕らえた若いゴマバラワシをサファリガイドが目撃している。