全米OPで初の四大大会決勝に臨む“遅咲き”ペグラ、快挙の裏に隠された泥臭い道のり「様々な困難からも立ち直り、より強くなれた」<SMASH>
「物事を多角的に見て、客観的に分析し言語化できる」ことが、自分の持ち味だと彼女は言った。 【動画】ペグラVSムチョバの「全米オープン」準決勝ハイライト 女子プロテニスプレーヤーのジェシカ・ペグラ、アメリカ合衆国ニューヨーク州バッファロー生まれの30歳。ツアー単6勝、複7勝。最高位はシングルス3位、ダブルスは世界の1位。 四大大会での最高戦績は、現在開催中の「全米オープン」の決勝進出。8日のアリーナ・サバレンカ(ベラルーシ/世界ランキング2位)戦に勝てば、さらに“優勝”へと更新される。 身長170㎝。プレースタイルは、ベースラインから下がらずフラットで打つカウンターパンチャー。テニス以外では、妹ケリーとともに健康食を提供するレストランを全国展開し(コロナ禍を機に閉店)、自らスキンケア・ブランドも立ち上げた。 単複双方で活躍するテニスの戦績はもちろん、オフコートでも彼女を形容する文言や肩書きは多い。自らが明かしているように、言語化が巧みで饒舌なため、情報にも事欠かない。何よりアメリカ国内では、彼女は「大富豪の娘」として広く知られ、その文脈で語られることが多かった。彼女の父のテリー・ペグラは、天然ガス掘削事業で財を成したビジネスマン。NFLのバッファロー・ビルズやNHLのバッファロー・セイバーズを所有し、その総資産は『フォーブス』誌によれば77 億USドル(約1116億円)にのぼるという。 さらに“ペグラ一家”の物語に、重厚感と彩りを与えるのが、ジェシカの母、キム・ペグラの生い立ちだ。テリーのビジネスパートナーでもあるキムは、バイトの面接のため訪れたレストランでテリーと出会い、仕事を任され、出会いの2年後に結婚したというシンデレラストーリーの体現者。それ以上に数奇なのが、韓国の孤児院で幼少期を過ごし、カナダ人夫婦の養子としてアメリカに渡ったという履歴だ。 キムに韓国時代の記憶はなく、自身のルーツを積極的に知ろうともしてこなかったという。ただ娘のケリーがDNAテストを受けたところ、「24%の韓国人と、21%の日本人ルーツ」が見つかったという。 「どうやら、私の生物学上の両親の一人は、日本人みたい」 キムはそう、NFL公式サイトで明かしていた。 そのような両親を持つジェシカ・ペグラは、キャリアのかなり早い時点から、自分が「ペグラ一家」の呪縛から逃れられないことを悟ったという。 だから彼女は、家族について語るのを厭わない。2年前に母のキムが心拍停止で緊急搬送され、その病状が長く伏せられていた時、詳細をニュースプラットフォームに寄稿し公にしたのもジェシカだった。「物事を多角的かつ客観的に見られる」という彼女の能力は、生い立ちと無関係ではないだろう。 ただ、きらびやかなプロフィールとは裏腹に、彼女が歩んできたテニス選手としての足跡は、むしろ泥臭いとすら言える。