全米OPで初の四大大会決勝に臨む“遅咲き”ペグラ、快挙の裏に隠された泥臭い道のり「様々な困難からも立ち直り、より強くなれた」<SMASH>
ここでも彼女の、世情を俯瞰し分析する力が、存分に生かされていた。2020年8月時点で80位台だったランキングは、翌年3月には33位に。トップ10入りを果たしたのは、その約1年後の2022年6月のことである。 彼女の類まれなる分析力と適応は、テニスの試合でも彼女を特徴づける大きな武器だ。今大会の4回戦で20歳の新鋭、ディアナ・シュナイダー(ロシア/同18位)と対戦した時も、サウスポー特有のシュナイダーのサービスへの対応策を試合の中で見つけ、実行した。 準決勝のカロリーナ・ムチョバ(チェコ/同52位)戦では、第1セットを瞬く間に1-6で失い、第2セットも序盤でリードを許しながらも、粘り強くボールを返し、相手のミスにも助けられながら、ムチョバの多彩なテニスを最後には攻略した。 決勝進出を決めた直後の、会見の席。「子どもの頃の夢」を諦めたことはあるかと問われた彼女は、「テニスを辞めたいと思ったことはある」と応じつつも、こう続けた。 「でもそんな時、私はいつも、状況を反転させてきた。だからこそ、さまざまな困難からも立ち直り、その都度、より強くなれたのだと思う」……と。 30歳で迎える、初の四大大会決勝の大舞台。人々はそんな彼女を、「遅咲き」とも呼ぶ。ただ、昨年に話を聞いた際、彼女はこうも言っていた。 「最近は、30代で素晴らしいプレーをしている選手がたくさんいる。同時に、18歳で結果を出す選手もいる。何歳からでも自分の可能性を信じられるのが、テニスという競技の、素敵なところでしょ?」 その自身の言葉の正しさを、ジェシカ・ペグラは、子どもの頃から夢見た舞台で証明している。 現地取材・文●内田暁