なぜ久保建英はマジョルカ復帰を決断したのか
ラ・リーガ1部の舞台で可能な限り長く出場時間を確保して、成長していくスピードをさらに加速させていく。目的を成就させる前提条件として、今シーズンこそは所属クラブの選択を間違えない。現時点での自分のレベルを客観視する作業を含めて、総合的な観点から弾き出された結論がレアル・ソシエダではなくマジョルカだった。 今シーズンのマジョルカにはキャプテンのGKマノロ・レイナをはじめ、MFサルバ・セビージャ、MFダニ・ロドリゲス、MFラゴ・ジュニオール、FWアブドン・プラツら2年前にともに戦ったメンバーが多く在籍。さらにビジャレアルからDFハウメ・コスタ、ヘタフェからはFWアンヘル・ロドリゲスと昨シーズンのチームメイトも新たに加わった。 久保は最終日まで戦い抜く覚悟で東京五輪に臨んでいたが、同時に新天地がどこになるにしても、新シーズンへ向けた準備期間にほとんど関われなくなる状況も覚悟していた。だからこそ、プレースタイルや性格を含めて、自分自身を熟知している選手たちが多いマジョルカは、短時間のなかで順応する上で理想的な環境が整っていた。 もちろん、そう簡単にポジションを奪えるほど甘い世界だとも思っていない。昇格チームの宿命として守備に追われる時間は長くなるし、2019-20シーズンの中盤から自身を重用してくれたビセンテ・モレノ監督(現エスパニョール監督)ももういない。 しかし、久保自身も2年前とは違う。ホセ・ボルダラス監督(現バレンシア監督)のもと、攻守両面でインテンシティーの高いプレーを前面に押し出す“武闘派集団”として異彩を放ってきたヘタフェへ移籍し直した理由を、久保はこう語っている。 「ヘタフェのサッカーがわかっていて、その上で残りの半年間は行こうと決めました。もともと守備が苦手だと言われがちだったというか、守備ができない選手だと目を向けられがちで、守備を人一倍やらないと認めてもらえないという思いがあったので」 残留争いに巻き込まれるとともに、ヘタフェでも出場機会を失っていった。それでも決して腐らずに不得手な部分を補い、その上で長所も磨き続けた日々は5月16日のレバンテ戦で決めた、ヘタフェを残留に導く昨シーズン唯一のゴールを生み出した。 そのヘタフェとの半年間の契約が満了。一時的に保有権を持つレアル・マドリードの所属となって迎えた東京五輪への最終的な準備期間中に久保が残した言葉は、グループリーグでの3試合連続ゴールなど、五輪本番での活躍を十分に予感させるものだった。 「いままで頑張ってきたことの対価ではないですけど、自分はボール扱いには長けていると思っていますし、自信もあります。ボールを持ったときに違いを出したいといつも言ってきたので、そういったものを少しでも見せていければと思います」