なぜメダルを逃した久保建英は号泣し「今までサッカーをやってきてこんな悔しいことはない」と語ったのか
涙が止まらない。銅メダルを手にできなかった直後の埼玉スタジアムのピッチで。フラッシュインタビューの途中で。U-24日本代表をけん引してきた20歳のエース、MF久保建英(レアル・マドリード)が人目をはばからずに号泣した。 東京五輪15日目の6日に行われた男子サッカーの3位決定戦。グループリーグで勝利しているU-24メキシコ代表と再び顔を合わせた日本は、前半13分にPKから、22分にはセットプレーから立て続けに失点。後半にも追加点を奪われ、必死の反撃も後半33分にMF三笘薫(川崎フロンターレ)が決めた1点にとどまった。 自国開催のヒノキ舞台での金メダル獲得を目指して、森保一監督のもとで2017年12月に立ち上げられた東京五輪世代チームは1-3の完敗と、1968年のメキシコ五輪で獲得した銅メダルに一歩及ばない4位をもって解散。久保をはじめとする選手たちは悔し涙をさらなる成長への糧に変えて、フル代表を含めた新たな戦いに挑んでいく。
「このゲームの重みを自分たちは理解できていなかった」
どれだけ記憶をたどってみても、公の場で流した涙を思い出せない。クールな立ち居振る舞いと、自らを客観視するコメント力とがトレードマークになって久しいだけに、メキシコに負けた直後に久保が見せた姿には心の底から驚かされた。 銅メダリストとオリンピアンとを非情なまでに分け隔てる、試合終了を告げる主審のホイッスルが夜空に鳴り響いた直後だった。ピッチへ突っ伏してしまった久保は、メキシコの選手たちにねぎらわれてもなかなか起き上がれなかった。ようやくひざまずいた体勢になり、芝生にこすりつけていた頭を上げときにはむせび泣いていた。 駆け寄ってきたDF橋岡大樹(シントトロイデン)までがもらい泣きした。スタッフから手渡されたタオルで顔を覆いながら、今度は仰向けになって体を震わせている。座り込んでも慟哭が止まらない。試合後のフラッシュインタビュー。涙の意味を問われた久保は大きく息を吐いて、必死に言葉を紡ぎはじめた。 「今日、勝つと決めてきて。グループリーグで勝っていた相手だったので、結果論ですけど、どこかで気の緩みがあったかもしれないですし、ちょっとこのゲームの重みが自分たちには理解できなかったのかなと思います」 同じ埼玉スタジアムで7月25日に行われたグループリーグ第2戦では、開始6分に自らが決めた先制ゴールでメキシコの戦略を狂わせた。5分後にはMF堂安律(PSVアイントホーフェン)もPKを決めて共演し、反撃を1点に抑えて勝利した。 同じ相手に二度も負けられないと、メキシコは目の色を変えてきた。すべて中2日の過密日程で迎える6試合目。スペインとの準決勝を延長戦の末に落としていた日本と同じくメキシコもブラジルと延長戦を戦い、PK戦の末に涙をのんでいた。