顔の真ん中のニキビをつぶすと「死の危険」ってホント? 安全にケアする方法は
鼻から口にかけての「死の三角形」の真相は、専門家に聞いた
「鼻筋から左右の口角にかけての三角ゾーンにあるニキビをつぶすと、深刻な感染症や、場合によっては死につながる可能性がある」という情報を目にしたことがある人もいるかもしれない。 ギャラリー:「病気を生む顔」になる食べ物とは 画像5点 「危険な三角形」や「死の三角形」と呼ばれるこの部分の感染症を心配すべき理由があるのは事実だが、専門家によると、ここで深刻な感染が起こるのは非常にまれだという。とはいえ、近年、ニキビをつぶすことへの警戒感が高まっているのはいい傾向だと、彼らは考えている。 皮膚科医は皆、ニキビは触らずに放っておくよう口をそろえて勧めているが、すべての人がその助言に従ってくれると期待するのは非現実的であることもよく知っている。そこで、ニキビを自宅でケアする方法と、皮膚科医の助けを求めるべきタイミングについて、科学的な見地から解説してもらった。
「死の三角形」とは
「危険な三角形」にあるニキビをつぶしても、命に関わることはまずないと、米マウントサイナイ病院の皮膚科准教授ジョシュア・ザイクナー氏は言う。ただし、ごくまれに、この部分の感染症から、顔面の一部麻痺などの深刻な合併症が起こる場合もある。 ザイクナー氏によると、顔の中央部には多くの血管があり、それらは海綿静脈洞(かいめんじょうみゃくどう)と呼ばれる構造に流れ込んでいる。海綿静脈洞は目のくぼみの後ろにある部分で、脳のすぐ下にある。この部分での細菌感染は「海綿静脈洞血栓症」という命にかかわる病気を引き起こす可能性がある。 ただし、ニキビをつぶしたせいで感染症が起こり、それが実際に海綿静脈洞に、ましてや脳にまで広がる可能性は非常に低いと氏は述べている。 ニキビをつぶすと小さな傷ができるが、通常は、海綿静脈洞のような深い部分にまで感染症が達するほど大量の細菌が侵入することはない。体のほかの部分にできた小さな切り傷と同じように、感染症が血液に到達する前に、皮膚の免疫細胞が毛穴の内部で食い止めてくれるからだ。 「危険な三角形」で侵襲的な(体に傷をつける)処置を行う際には、慎重な外科的技術が必要になると、皮膚科医院の米ダーム・インスティテュート・オブ・シカゴの創設者兼医療ディレクターであるジョーダン・カークビル氏は述べている。 このエリアには血管が密集しているため、過剰な出血が起こりやすい。その結果、血管の外で血液が固まったり溜まったりして、組織の損傷や感染症を引き起こす場合があるからだ。 しかし、皮膚科医としての20年の経験の中で、海綿静脈洞感染症に出合ったことは一度もないとカークビル氏は言う。「この部分のニキビをつぶしたことが原因で死に至るという状況は、極めてまれです」 だからといって、ニキビをつぶしてもいいというわけではなく、特に「危険な三角形」にできたニキビはつぶすべきではない。 どこにできたものであろうとも、ニキビをつぶすことは感染症や色素沈着、永久的な傷跡につながるとザイクナー氏は言う。血管が集中している「三角形」では、感染症が広がるリスクがより高い可能性もある。