【図解】内閣不信任決議と問責決議の違いは?<国会用語>
国会が会期末に近づくと「内閣不信任決議」の提出が取り沙汰されることがあります。似たような言葉で「問責決議」を耳にしたことがある人も多いでしょう。この2つはどんな違いがあるのでしょうか。
「総辞職か解散」法的拘束力のある内閣不信任決議
内閣不信任決議は衆議院のみに認められた権限で、憲法による規定があり、可決されると法的拘束力を持ちます。一方、衆議院で内閣不信任決議案が提出された場合、参議院で問責決議案が提出されるケースが多くあります。ただこちらは可決されても法的拘束力はありません。 それではそれぞれ具体的に見ていきましょう。 前述の通り、内閣不信任案を発議し、決議できるのは衆議院のみです。内閣の政権運営を信任しないという議院としての意思を示す決議で、発議者と50人以上の賛成者がいれば提出できます。衆議院本会議で出席議員の過半数の賛成があれば可決されます。 内閣不信任決議案が可決された場合は、憲法69条の規定により、内閣は10日以内に「総辞職」するか、衆議院を「解散」しなければなりません。現行の憲法下では4回可決された事例があり、いずれも衆議院が解散され、総選挙に突入しました。 内閣不信任決議の4回の可決事例は以下の通りです。 ・吉田茂内閣(1948年12月、1953年3月) ・大平正芳内閣(1980年5月) ・宮沢喜一内閣(1993年6月)
法的拘束力のない問責決議
同様のケースで、参議院が首相や大臣に対して意思表示するのが問責決議です。通常の国会決議と同じく、発議者と10人以上の賛成者で提出することができ、参議院本会議で出席議員の過半数の賛成があれば可決されます。ただ憲法による規定はなく、可決されても法的拘束力はありません。 ただ、一定の政治的効果はあるといえます。例えば問責決議案が可決された場合、その後の国会で野党が審議拒否をすることが考えられ、結果的に政権運営が行き詰まったり、大臣の辞任につながったりする場合があります。 首相に対する問責決議の可決は現行憲法下で4回あります。 ・福田康夫首相(2008年6月) ・麻生太郎首相(2009年7月) ・野田佳彦首相(2012年8月) ・安倍晋三首相(2013年6月)
内閣「信任」決議も2回の可決事例
珍しいケースとして、内閣への「不信任」ではなく「信任」を決議する場合があります。これも衆議院のみの権限で、憲法の規定により法的効果があります。 内閣信任決議は2回可決事例(1992年6月の宮沢喜一内閣、2008年6月の福田康夫内閣)があります。 上記は可決されたケースですが、内閣信任決議が否決された場合は、不信任決議が可決された場合と同様の法的効果があります。