<国会用語>法律ってどうやってつくるの?
昨夏に成立した消費税増税法のような法律案に関するニュースの中で、「法案が閣議決定されました」とか「衆議院を通過しました」などと報じられることがあります。これらは法律案が法律として成立するまでの途中経過を伝えるニュースです。国会は「唯一の立法機関」と憲法で規定されているように、法律をつくるのが国会の最大の仕事です。どのような流れで法律ができるのか、見てみましょう。
国会は「唯一の立法機関」
日本の法律はすべて、国会での審議を経て生まれています。つまり、法律案は衆議院と参議院の両院で審議されて可決されない限り、法律として成立しないのです。官僚が原案を作成したり、内閣が閣議決定した段階では、ただの「案」にすぎません。 法律案はだれでも国会に提出できるわけではありません。提出できるのは、内閣と国会議員だけです。議員による法律案の提出や、それによって成立した法律は「議員立法」とも呼ばれます。しかし日本では、内閣提出の法律案が成立することが圧倒的に多いのが現状です。
法案作成から提出までの流れ
《閣法》 内閣が提出する法律案の原案は各省庁で作成されます。それらは閣議にかけられる前に、すべて内閣法制局によって審査が行われます。内閣法制局のチェックは、憲法や他の法律との整合性、立法内容の妥当性など法律的な観点や、立案の意図が正確に表現されているか、のような技術的な観点などから幅広く行われます。審査を経た法律案は閣議決定され、内閣総理大臣から国会に提出されます。 《議員立法》 一方、国会議員が法律案を作成する場合は、衆参それぞれの法制局がアドバイスやチェックを行います。衆議院議員が立案する際は衆議院法制局、参議院議員の場合は参議院法制局がサポートします。審査が終わると、議員がそれぞれが所属する議院に法律案を提出します。
国会での審議の流れ
法律案が提出されると、いよいよ国会での審議が始まります。一般的には衆議院から審議が始まるパターン(衆議院先議)が多いですが、参議院から先に審議が始まる場合もあります。ここでは衆議院先議の例で国会審議の流れを見てみましょう。 法律案が衆議院に提出された場合、まず衆議院議長が、法律案の内容を踏まえて審議するのにふさわしい委員会(例:経済産業委員会や厚生労働委員会など)を選びます。委員会では、本会議での審議に先立ち、法律案の詳細な審査を行います。 手順としては、内閣提出であれば担当大臣が提案理由説明を行い、法律案の内容や意義を説明します。審査は主に質疑応答形式で行われ、法案提出者に対して法律案の課題や問題点をただし、明らかにしていきます。重要法案の審査では、参考人を呼んで意見を聞いたり、公聴会を開いて、利害関係者から意見を聞いたりすることもあります。十分に審査が尽くされたと判断されると、法律案は採決にかけられます。委員会としての結論が出されたら、次は本会議で審議されることになります。 ちなみに委員会での審査の結果、必要があれば修正案が作成されます。また可決された後、政府が法律を執行する際の注意点などを示す「付帯決議」が付けられることもあります。 本会議では、委員会での審査結果を踏まえて審議されます。そして採決が行われ、衆議院としての最終的な結論を出します。本会議で可決されると、法律案は参議院に送付されます。新聞やテレビのニュースで「法案が衆議院を通過しました」と報じられる段階で、ここでもまだ法律案は成立していません。 参議院でも、衆議院の時と同じように、委員会から審査が行われ、本会議で審議された後、採決されます。参議院の本会議でも可決されれば、晴れて法律として成立します。