なぜ西武は”難攻不落”オリ山本由伸の攻略に成功したのか?
この日もカットボールでストライクを先行させる場面が多く、3回は9球、4回はわずか4球で0点に抑えた。最後に杉本から三振を奪ったのも140kmのカットボールだった。山本に投げ勝った2016年のドラフト1位右腕へ、エースに育ってほしいと期待をかけてきた辻監督も「成長を感じます」とこんな言葉を紡いだ。 「勉強してきたなかで真っ直ぐでも変化球でも腕を振って、フォアボールを怖がらずに投げられるようになった。ピンチでもまずは腕を振って、バッターに向かっていく圧が出てきたと僕たちも感じている。欲を言えば8回をしっかり行ってほしかったけど、(最近の投球が)自信になって野手にも信頼感といったものを少しずつ示しているよね」 リズムがいいから好守も増える。初回一死一塁で3番・吉田正尚が放った、ヒット性の打球をセカンドゴロに変えた山田遥楓のファインプレーはその象徴と言っていい。4回は6-4-3で、6回には4-6-3とともに山田が絡んだ併殺も完成させている。 死球を受けて左腓骨を骨折し、長期離脱を余儀なくされた外崎修汰に代わってセカンドを務める24歳の山田は、同じく24歳の愛斗、27歳の呉念庭、そして若林らとともに、レギュラー野手に故障者が続出した西武を必死のプレーで支えている。 さらに昨シーズンからキャプテンを務める28歳の源田は、9回のサヨナラ機を含めて再三のチャンスで快音を残せなかった前日の引き分けと、一夜明けたこの日の初回で送りバントを失敗した不甲斐なさを、シーズン2度目の猛打賞へと変えた。 「(山本が)いいピッチャーだというのはわかっていたので、積極的にいこうと思っていました。1打席目にちょっとやっちゃったので、何とか取り返したい、と」 中村と栗山に代表されるベテランと源田らの中堅、そして今井や山田、2奪三振を含めた三者凡退で最終回を締めてシーズン初セーブをマークした平良らの若手が極上のハーモニーを奏でて、山本という高い壁を乗り越えてつかんだ勝利。ギャレットも登録抹消には至らず、ソフトバンクと対峙する福岡遠征にはベンチ入りできる見通しだ。 「この2試合、打線も本当に感じがよくなってきた。序盤戦は投手陣に助けられた部分が多かったので、次の遠征シリーズは野手に頑張ってもらいたいですね」 2試合連続の2桁安打を放った打線に辻監督も声を弾ませた。ファームでは山川や木村文紀が結果を残し、復帰へ秒読み態勢に入った。14勝15敗4分けと借金を「1」に減らし、オリックスを抜いて再び4位へ浮上した西武は開幕から続く苦戦が反撃への糧になると信じて、ソフトバンクと楽天、ロッテの上位陣と対峙する遠征に臨む。 (文責・藤江直人/スポーツライター)