西武がオリと傷だらけのドロー…勝利方程式の崩壊危機
無意識のうちに一塁ベースへ頭から飛び込んだ。6-6で迎えた9回二死二、三塁のサヨナラのチャンス。二塁ベース付近へのゴロを放った西武のキャプテン、源田壮亮は危険だとして辻発彦監督から禁止されていたヘッドスライディングを繰り出した。 市川貴之塁審のコールはアウト。すかさず辻監督がリクエストを要求する。リプレー検証の結果、源田が必死に伸ばした左手がほんのわずか届いていなかった。無情のゲームセット。ユニフォームを泥だらけにした源田はぼう然と立ち尽くすしかなかった。 今シーズン最長となる3時間58分の死闘の末に引き分けた、4日のオリックスとの8回戦。西武が陣取る本拠地メットライフドームの三塁側ベンチには、プレーボール前から緊張感が漂っていた。守護神・増田達至の出場選手登録が抹消されたからだ。 リーグトップタイの8セーブをあげながら救援失敗が3度を数え、防御率が6.75に下降していた増田を抹消した理由を、辻監督は「リフレッシュじゃない」と説明した。 「(再登録できる)10日で調整できれば(一軍に)上げるけど、特に日にちは決めていない。しっかりと自分を取り戻して、自信をもって上がってきてくれれば」 長丁場のペナントレースを見すえた決断。ただ、リード・ギャレット、平良海馬とのトリオで形成していた「勝利の方程式」を補える投手は現状では見当たらない。必然的に先発投手に、できるだけ長いイニングを託す青写真が描かれる。 しかし、前回登板で一軍初勝利をあげた2年目右腕、20歳の上間永遠が武器とするコントールが定まらない。いきなり連続四球を与えた初回に2点を失い、味方が追いついた直後の3回には3番・吉田正尚に7号ソロを浴びて勝ち越された。 上間を4回77球であきらめた西武ベンチは小刻みな継投に入ったが、2番手の左腕・佐野泰雄も5回に四球絡みで失点して2点差とされる。それでも打線が奮起し、5回に7番・呉念庭、8番・愛斗の連続タイムリーで逆転。6回にも1点を追加した。 すでに猛打賞をマークし、3打点をあげていた吉田から始まる7回。西武はこれまで8回を任せてきた豪腕セットアッパー、平良を5番手としてマウンドに送った。 「あそこは大事な回だったから。一番怖いところ(打順)でもあるしね」 こう振り返った指揮官の期待に応えた昨シーズンの新人王は、最速157kmのストレートを軸に、3月26日の開幕戦から継続している無失点を15回3分の1に伸ばし、球団新記録となる14試合連続ホールドポイントも樹立した。