なぜ西武は”難攻不落”オリ山本由伸の攻略に成功したのか?
2001年のドラフト指名で入団した同期生で、20年目を迎えている37歳のベテランコンビは異口同音に「ランナーを返せてよかった」と振り返った。故障者が続出した序盤戦で打線をけん引する2人へ、辻監督も「本当に頭が下がります」と目を細めた。 「すべてクリーンナップの前にチャンスを作って、しっかりと2人のベテランが返すという理想的な形だったのもよかったよね」 開幕直後に山川穂高が負傷離脱してからは、4番を任される試合が増えた中村は現役で最多、プロ野球歴代では16位にランクされる426本のホームランのうち、今シーズンに限ればわずか2本にとどまっている。それでもチーム最多の21打点をマークしている軌跡に、難攻不落の山本を攻略できた理由が凝縮されている。辻監督が続ける。 「あれだけのホームランバッターなんだけど、目に余るぐらいチャンスではヒットに徹して、(走者を)返すバッティングをしてくれる。本当に大きいです」 オリックスの捕手・頓宮裕真は3回の場面でインコースを、5回にはアウトコースを要求していた。しかし、豪腕の山本でも常に完璧なピッチングができるわけではない。ともにやや真ん中に入ってきた失投を見逃さない中村の集中力と、大振りを封印して確実にミートに徹したコンパクトなスイングが、山本のリズムを最後まで狂わせ続けた。 7回一死一塁から源田のタイムリー三塁打で4点目を失った直後に、山本はマウンドを降りている。被安打10は自己ワースト。2番手のK-鈴木も森に2ランを浴びたため失点は今シーズン最多の「5」を数え、試合前に「1.39」でリーグ1位だった防御率は「1.92」で3位に後退した。対照的に中村の得点圏打率.400は同4位につけている。 もっとも打線がどれだけ得点を積み重ねても、失点が上回っては勝利を手にできない。その意味では西武の先発を任され、6度目の先発でシーズン最長となる7回3分の2を投げて2失点に封じ、2勝目を手にした今井達也の熱投も見逃せない。 同じ1998年生まれで22歳の山本とは4月21日に京セラドーム大阪でも投げ合い、7回4失点でシーズン2敗目を喫していた。期する思いがあったのだろう。ヒーローインタビューで「絶対に(山本)由伸より先にマウンドを降りたくない、という気持ちでマウンドに上がりました」と振り返った今井は、こんな言葉を添えることも忘れなかった。 「昨日、一昨日と中継ぎのピッチャーの方々が数多く投げていたので、今日はなるべく一人で投げたいと(投手コーチの)西口さんとも話していたんですけど。その意味では8回はもうちょっと頑張りたかった、という思いですね」 100球を超えた疲れからか3つの四球を与え、暴投から2点目を失った8回の投球を悔やむ姿からは、開幕からローテーションを任される責任感が伝わる。最後はこん身の力を込めて4番・杉本裕太郎を空振り三振に斬り、平良へバトンを託した。 150km台の威力あるストレートにこだわるあまりに制球を乱し、四球から自滅するケースが多かった。一転して4月28日のロッテとの前回登板ではカットボールに面白さを覚え、自身に勝敗はつかなかったものの、7回2失点の好投で勝利に貢献した。