なぜ畑岡奈紗は全米女子プロ最終日「64」の猛追で3位タイに食い込む大健闘を果たせたのか…背景にある引き出しの多さ
女子ゴルフの今季メジャー第3戦のKPMG全米女子プロゴルフ選手権の最終日が11日(日本時間12日)、ペンシルベニア州フィラデルフィア郊外のアロニミンクGC(6577ヤード、パー70)で行われ、1アンダーの10位で発進した畑岡奈紗(21、アビームコンサルティング)は1イーグル、4バーディ、ノーボギーの64で回り、トータル7アンダーで首位に7打差の3位タイに食い込む大健闘を見せた。最終日に7つスコアを伸ばしたキム・セヨン(27、韓国)が通算14アンダーで米ツアー11勝目にしてメジャー初優勝。米メジャー通算7勝を誇るパク・インビ(32、韓国)が同9アンダーで2位に入った。河本結(22、リコー)は同9オーバーの48位タイ、渋野日向子(21、サントリー)は同11オーバーの58位タイ、野村敏京(27、フリー)は同18オーバーの73位だった。
10番で使ったまさかのユーティリティ
引き出しのなかにしのばせていた秘密兵器の封印を迷うことなく解いた。優勝へ向けた真の勝負の幕が開ける、サンデーバックナインと呼ばれる最終日の後半9ホール。いきなり迎えた大ピンチで、畑岡が手にしたクラブに誰もが目を疑った。 10番パー4(398ヤード)。ティショットをフェアウェイ右の林へ打ち込み、グリーン左手前に広がる池を避けるように放った第2打もグリーンの右へこぼれてしまった。打ち上げる形となる難しいアプローチ。しかも、硬さと速さを増したグリーンはアンジュレーションがきつく、ピンまでの距離も遠い。ミスショットが即ボギーにつながり、優勝争いから脱落しかねない重大な局面で、畑岡がバッグから取り出したクラブは何とユーティリティだった。 果たして、金属音を残して強く転がされたボールはピンの右を大きく外れて、勢いよくオーバーしていく。万事休すかと思われた次の瞬間、ボールはピン奥の急傾斜を上り切らずに、なおかつ重力に導かれるように転がり落ちてきて、さらにピンへと吸い寄せられていった。 最後はわずか50センチの距離で止まり、難なくパーをセーブしたスーパーショット。ピンチを追い上げへの気勢へと変えたユーティリティのクラブ選択に込められた理由を、ホールアウト後にインタビューに応じた畑岡はちょっぴり照れくさそうに明かしている。 「ずっと練習してきたところで、上手く寄せられてよかったと思っています」