「オワコン」と思いきや、実際はインバウンドで大盛況! あの「カタログ通販の会社」がホテル事業で大きく成長していた
これを機に、異業種交流会などを通じて人脈を築き、2021年、札幌とすすきのの物件との巡り合いがあって、グランベルホテルをオープン。新設とM&Aを続け、5施設を経営するに至ったのだ。 前述した通り2025年には札幌、小樽にも新たな開業を控えるが、北海道ではインバウンド人気にプラスして、ここ数年、温暖化によって避暑のニーズも高まっている。こうした状況から、今後もマーケットは拡大すると睨んでいるそうだ。
「需要と供給のバランスから見て、まだまだホテルを増やしても大丈夫だと考えています。鍵となるのは飛行機の便数で、航空燃料不足や空港への乗り入れ数にまだ課題があります。ですが行政も解決に向けて動いており、見通しは明るいのではないでしょうか」 北海道以外では、収益性が高い東京であと2、3軒を。次いで、スリランカ、ロサンゼルスでもホテル建設を検討したいと話す。業績の向上は続きそうだ。 ■利益が半減するシーズンも…
順調そのものに見えるホテル業だが、課題もある。ひとつには、リゾートにはシーズン性があり、季節によって稼働率にばらつきがあることだ。北海道は比較的安定しているが、たとえば、福島県裏磐梯にある「裏磐梯レイクリゾート」は、8月、10月の宿泊客が突出して多いという。逆に都市型ホテルは全般的に8月が弱い。 「とはいえ、インバウンドの増加で以前よりばらつきは減っており、悪くても65~75%の稼働は維持できています。しかし中には、単価を下げなければ稼働につながらない時期もあります。結果として、純利益が半減する月も……。一年を通して単価が下がらないのは東京だけですね」と安野社長は眉根を寄せる。
課題はあれど、ベルーナのホテル業はなぜこんなに成功できているのだろうか。その理由はビジネスへの根本的な姿勢にありそうだ。 カタログ通販事業とホテル事業を端から見ると、まったく違って見える。けれど安野社長は、「専門性の違いは感じていません。商売の基本は同じ。弊社では呉服や化粧品販売もしていますが、『この事業だからこう』という考え方はしていないのです」とこともなげに言う。 大切にしているのは、近江商人の「三方良し」にも通ずる、3つの満足度の向上だそうだ。それぞれの要素について具体的に見ていこう。