自分のいる環境が合わないなら逃げていい――齋藤飛鳥が学生生活で見つけた「大切な場所」 #今つらいあなたへ
累計1800万部(2024年8月時点)の売り上げを誇り、ドラマ化、映画化される漫画『【推しの子】』。今回のドラマ化、映画化にあたり、伝説のアイドルのアイ役に抜擢された齋藤飛鳥(26)は、アイの持つ「影」の部分に心を寄せた。人付き合いを不得手とし、小・中学校時代には不登校も経験。「自分には何かが足りない」と自らを責めることもあった彼女は、乃木坂46という「帰れる場所」で、生きるための様々な学びを得た。(取材・文:田口俊輔/撮影:稲垣謙一/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
輝くアイドルになる素質が私にはなかった
「当初は私ではアイという存在に深みを出せないなと思っていました。素直に私とは違いすぎるので」 『【推しの子】』の軸となる登場人物にして、グループの絶対的センターであり伝説のアイドルと称されるアイは、自分から最も遠い存在だと齋藤飛鳥は感じ、一度はこのオファーを断った。しかし、再オファーの際にもらったある一言が心に残り、台本と原作を読み込んだ末に首を縦に振った。乃木坂46という日本を代表するアイドルグループに昨年まで約12年在籍し、幾度となくセンターという“顔”を務めてきた齋藤がアイに共感したのは、光り輝けば輝くほど色濃くなる“影”の部分であった。 「『ちゃんと影の部分を持つ齋藤飛鳥なら、アイの影の部分を嘘なく演じられると思う』と言っていただいたんです。確かに素のアイは人の愛を知らず、その反動で『愛する対象が欲しい。愛されたい』とキラキラ光って人を照らす、強さ・弱さの両面を持った人間だと強く感じました。そこに生身の人間として共感できて、何よりアイがキラキラするために秘めたものと同じようなものを、私も10年以上アイドルとして活動する中で秘めていたので、その“影”の部分はうまく出せるかなって」
常に華やかで、まばゆい光で照らされるアイドルという存在。その世界の中にいて、まぶしさに目がくらんだ経験が今も齋藤の中に強く残っている。 「アイのように輝くアイドルになりたかった、けれど自分には素質がないんだと10代前半で思い知りました。根っこは明るいタイプではないんです」 思わず苦笑いを浮かべ、そう語る。物静かで理知的、時に毒気も感じさせる齋藤、そのたたずまいが“クール”と称されることが多い。 「想像できないかもしれませんが、小学校低学年の頃は活発な普通の子どもだったんです。けれど、徐々に……本当に徐々に、人間関係がうまくいかない、学校生活が送れないなと感じることが増えていって。気づいたらこうなっていました」 齋藤の言葉の端々からは、冷静に自分を俯瞰する趣がある。「周囲と合わない」と思い始めたのは小学5年生の頃からだった。