自分のいる環境が合わないなら逃げていい――齋藤飛鳥が学生生活で見つけた「大切な場所」 #今つらいあなたへ
どうあがいても、合わないことはある
中学に進学後、意を決して学校・周囲と向き合おうとするも、うまく溶け込めない日々は続く。1年生の夏、明るくなってほしいとの願いを込めて母が勧めた乃木坂46のオーディションを受ける。1期生として選ばれた総勢36人の中に、齋藤の姿はあった。 人付き合いの仕方がわからないうえ、メンバー最年少の自分が年上の女性ばかりの中にうまくなじめるか不安だった。その不安はすぐ杞憂に終わる。メンバーたちは、まるで本当の妹のように可愛がってくれた。レッスンとメンバーとの交流は、学校や読書とは全く違う生活や人間関係の構築の仕方などの新しい学びを与える。そして見たことがない世界が広がっていく体験をもたらす活動は、齋藤にとって大切な居場所になっていった。活動が本格化し多忙な日々に変わっていくとともに、中学への登校は減っていく。 活動と学業を両立させるため、高校は通信制を選択した。約3年近いアイドルとしての経験が少なからずの自信と勢いを与えたことで、一つ大きなことを試みた。 「周囲になじめるよう、高校デビューを目指したんですよ。今度こそはって、入学式に行ったら……あえなく失敗(苦笑)」
小学生の時と同じように自分なりにコミットしようとするも、その思いは泡と消えた。その時、一つの学びと気づきを得た。 「そもそも、普通の学生としての生き方が向いてないんだと、そこで腑に落ちました。それ以前は周囲とうまくいかないことがあるたびに、『自分の何かが足りてないんだろうな』と、自分を責めていました。けど……これは、乃木坂46という“帰れる場所がある”という安心感から行き着いた結論ですが、『どうあがいても、合わないことはある』って。学校という場において、無理して周囲になじもうとすることは、私にとってさほど重要じゃないと思えたんです」 昔のような焦りは生まれず、むしろ校内では一人の時間を気楽に過ごした。しかしながら、齋藤は決して学校の全てを否定せず、学ぶべきものはたくさんあるとも考える。 「私は小・中・高で習うべき、常識や教養、人間関係の築き方は身につけられませんでした。もしかしたら、知らないうちにメンバーを傷つけてしまったこともあったかもしれません。だからこそ、もっと人と触れ合い、上手に関係を築ける方法を学べばよかったと反省したこともあります」 「もし、自分がもっと器用な人間なら学校にも通えて、普通の生活が送れたのでは?」と振り返る。ただ、自らの選択に後悔はなかった。 「乃木坂46でしか学べなかったことがたくさんあり、卒業後の今も学んでいることが現在進行形でたくさんあります。若い時の判断でしたが、自分の人生では、この選択が良かったんだと思っています」