自分のいる環境が合わないなら逃げていい――齋藤飛鳥が学生生活で見つけた「大切な場所」 #今つらいあなたへ
自分を守るために学校から逃げた
何か大きな原因があったわけではない。ただただ漠然と、周囲に対し温度差を感じ始め、その差は次第に大きく広がっていった。 「自分なりに明るく振る舞えるよう、お友だちとたくさん遊べるようにと、いろいろ工夫してみたんですよ。例えば、交換日記みたいなものに参加したこともありました。ただ、本当のことを書いても面白くなるはずがないため、アイじゃありませんが、『これ、読んでくれたら面白いだろうな』と、読んだ子に楽しんでもらいたいからって、まるで物語のような話を、さもあった体(てい)にして書いてしまったりして(苦笑)」 無理に周囲と歩調を合わせようとするも、うまく合わせられない毎日。日ごとに窮屈になっていく学校生活に疲れ、登校回数は徐々に減り、かろうじて勉強についていける程度の出席数になっていく。ときどき学校に行けば、それを面白く思わない同級生や上級生から心ない言葉をかけられることも。その出来事が、さらに齋藤を学校から遠ざけた。 「暴力を振るわれるようなとてつもないいじめに遭ったわけではありません。本当に些細なものですが、チクチクした言葉や目線、態度が気になってしまって。それに対して自分の力ではどうすることもできず。そこから逃げることが一番自分を守れることだと思い、学校から逃げました」 小学校高学年の頃には不登校になる。人付き合いに対する感情、学校に対するさめた感情を和らげたのは、母の深い愛情だった。 「母は繊細で、かつ心が大きく愛情深い人。私が『嫌だ』と言うことがあれば寄り添ってくれて、『無理な時は無理だよね』と言ってくれました。きっと心配していたはずですが、その心配を表に出さず、ずっと私の気持ちを酌み尊重してくれました」
母の愛に甘え、家では好きな読書に没頭。読書は楽しみを与えるだけでなく、学び舎の代わりとなった。 「学校は勉強だけじゃなく、人間関係や世の中の仕組み・常識なども学ぶ場所です。そこに通えないということは、人付き合いの仕方を学べないということ。私は学校で学べなかった分、本を通して社会や人間関係の形を知る機会がすごく多かった」 好きゆえに、自分にとって便利な道具にはしなかった。 「本に励ましてもらったり、文中からすがれる言葉を見つけて、『安心した』と思わないようにしていました。いろんな選択肢を本の中からいただき、その選択肢を今の自分の状況と照らし合わせながら、できるだけ自分の力で解決するための方法を考えていましたね」