「新しい認知症観」打ち出し、社会との共生目指す 患者増加予測で政府が初の基本計画
国は2004年にそれまで「痴ほう」と呼ばれていた表現を「認知症」に変え、誤解や偏見の解消に努めた。しかし、「認知症になると何も分からなくなり、できなくなる」という考え方が根強く残っており、認知症の人が社会的に孤立し、そうした人の意思が十分尊重されない状況がいまだに見られるという。
基本計画は新しい認知症観を「(症状が出ても)できることや、やりたいことがあり、住み慣れた地域で仲間とつながりながら自分らしく暮らし続けることができる」と定義した。その上で「年齢にかかわらず今や誰もが認知症になり得る状況を鑑みれば一人一人が認知症を自分事として理解し、自分自身やその家族が認知症であることを周囲に伝え、自分らしい暮らしを続けるためにはどうすべきか、考える時代が来ている」と指摘している。
「当事者の意思尊重」など4つの重点目標、12の施策
政府が決めた認知症施策推進基本計画は、2029年までを「第1期計画期間」として4つの重点目標を掲げた。そしてそれぞれについて評価の指標を設定して目標の達成を目指している。重点目標の最初に挙げたのは、認知症になっても希望を持って暮らし続けるという「新しい認知症観」を国民一人一人に理解してもらうことだ。指標として、当事者や家族を支援する「認知症サポーター」の養成者数などを定めた。
2番目の目標は「生活における当事者の意思尊重」で、認知症の当人が体験や要望を語り合う「本人ミーティング」を行政担当者が参加して実施している自治体の数などが指標。3番目は「地域で安心できる暮らし」で、地域で何らかの役割を果たしていると感じている当時者の割合などを見る。4番目は「新たな知見や技術の活用」。国が支援、実施している関連研究事業の成果が社会実装されている実例数などを指標にしている。
基本計画は重点目標、評価指標のほか、今後推進する具体的施策として以下の12項目を列挙した。
(1)国民理解の増進 (2)自立して生活するための「認知症バリアフリー」の推進 (3)当事者同士で悩みを話し合う「ピアサポート活動」など社会参加の機会確保 (4)当事者意思決定支援と権利確保 (5)専門的な医療提供など保険医療、福祉サービスの整備 (6)地域包括支援センターや企業での相談体制の整備 (7)予防・診断・治療・介護などの研究推進 (8)科学的知見に基づく認知症予防 (9)施策策定に必要な調査実施 (10)かかりつけ医やサポート医、地域支援センターなど多様な関係者・組織の連携 (11)参考例の提供・共有など自治体への支援 (12)外国政府や国際機関・関係団体などとの国際協力